ヨルダン川(読み)ヨルダンがわ(英語表記)Jordan

翻訳|Jordan

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヨルダン川」の意味・わかりやすい解説

ヨルダン川
ヨルダンがわ
Jordan River

西アジア,パレスチナ地方を流れる川。アラビア語ではナフル・アルウルドゥン Nahr Al-Urdun,ヘブライ語では Ha-Yarden。全長約 360km。シリアレバノンの国境に位置するヘルモン山南東斜面に源を発する。フーレ盆地を南流してガリラヤ湖にいたり,さらに南流して死海に注ぐ。死海での標高は海面下 400mで,世界で最も低い。ガリラヤ湖より上流は,ほぼ直線状に流れるが,下流は蛇行し,たびたび氾濫する。峡谷はアフリカ東部からアカバ湾を経てトルコ南部に北上するヨルダン地溝帯の一部をなし,フーレ盆地の下流では,水面は海面よりも低い。乾燥地帯を流れるため,沿岸はヨルダンイスラエルの重要な農業地域となり,野菜,果実,サトウダイコンなどが栽培される。1967年の六日戦争(第3次中東戦争)以降,ヨルダン川左岸のヨルダン領をイスラエルが占領(→ヨルダン川西岸)。実質的にヨルダンとイスラエルの国境をなしている。イスラエルでは,フーレ盆地の沼沢を干拓したり,ネゲブの砂漠地帯(→ネゲブ地方)にパイプラインで水を引くなど,大規模な耕地造成を行なった。パレスチナを流れる主要な川であり,流域には史跡が多い。キリスト教では,イエス・キリスト洗礼者ヨハネによって洗礼を受けた川とされている。2015年,ヨルダン川東岸,死海から北 9kmにある場所が,洗礼の地「ヨルダン川対岸のベタニア」(アル・マグタス)として世界遺産文化遺産に登録された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨルダン川」の意味・わかりやすい解説

ヨルダン川
よるだんがわ
Jordan

西アジアのヨルダン地溝帯を南流する内陸河川。アラビア語ではウルドゥン川、ヘブライ語ではヤルデン川という。シリア・レバノン国境沿いを走るアンティ・レバノン山脈の南端、ヘルモン山付近に、ハースバーニー川、バーニャース川などとして源を発し、イスラエルに入ってヨルダン川となり、南流していったんティベリアス湖(ガリラヤ湖)北端に流入する。その後ティベリアス湖南端から流出し、シリア・ヨルダンの国境をなす左岸の支流ヤルムーク川などをあわせ、イスラエル・ヨルダンの国境を蛇行しながら南流し、ヨルダン領内に入って最後は死海に流入して終わる。全長約350キロメートル。

 ヨルダン川はイエス・キリストが洗礼を受けた川と伝えられるが、そのほか流域にはユダヤ教、キリスト教にゆかりの聖跡が多い。イスラエルはティベリアス湖からヨルダン川の水を南部のネゲブ地方へ導き、水道、工業、灌漑(かんがい)用水として利用し、ヨルダンは支流のヤルムーク川、ザルカ川から灌漑用水を取水している。国際河川であるため水資源の利用をめぐっては紛争も多い。

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