日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガンジス・デルタ」の意味・わかりやすい解説
ガンジス・デルタ
がんじすでるた
Ganges delta
インド、バングラデシュ両国にまたがる、ガンジス川、ブラマプトラ川によって形成された大デルタ地帯。デルタはガンジス川の河口から約400キロメートル上流の標高28メートル、バギラティ川との分流点から下流に広がる。南北約400キロメートル、東西約400キロメートル、面積5万8720平方キロメートル。この地点までは1000トン級の船が遡航(そこう)可能で、平野の勾配(こうばい)は400キロメートルで28メートル低下するにすぎない。分流点から約300キロメートル下流の地点までは安定した平野で、稲作やジュート(黄麻(こうま))の生産が行われ、約1億の人が住んでいる。コルカタ(カルカッタ)は安定した平野の先端にあり、ベンガル湾の海水も河口から140キロメートル上流の標高6メートルのコルカタまで遡上する。河口から上流100キロメートルの間は成長過程にある三角州である。大きい河口だけでもフーグリ川をはじめ20以上あり、マングローブの生い茂る密林と、網状に乱流する河川と多くの島が集まったスンダルバン地域が広がっている。人を寄せ付けない低湿の密林にはトラやシカ、ワニをはじめ動物相が豊富で、サーズナカリ、ホリデー島、ロージャン島などの動物保護区がある。年降水量は1600ミリメートルから1200ミリメートルと内陸に向かうにつれて減少するが、ブラマプトラ川に沿っては2000ミリメートルを超す地域が多い。年平均気温26℃、湿度は年間を通じて80~90%と高温多湿で、サイクロンによる高潮の害も大きい。河道の変化が著しく、現在のフーグリ川はガンジス川の本流であったとされている。古代はタムルク、中世はゴール、近世にはダッカが中心地であったが、現在はコルカタに中心地が移った。
[成瀬敏郎]