サイクロン(読み)さいくろん(英語表記)cyclone

翻訳|cyclone

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サイクロン」の意味・わかりやすい解説

サイクロン(集塵装置)
さいくろん
cyclone

集塵(しゅうじん)装置の代表的なもので、流体旋回流によって生ずる遠心力を利用した粉塵の分離装置である。流体が気体の場合にサイクロンとよび、気体中に懸濁している固体粒子または微小液滴を分離する。流体が液体の場合にはハイドロサイクロンhydrocycloneまたは液体サイクロンとよび、液体中に懸濁している固体粒子の粒度や比重差による分離に用いられる。また、それぞれの用途によって、分級サイクロン(粒度による分離を行う)、サイクロン集塵機などとよぶ。気体サイクロンと液体サイクロンでは、装置各部の寸法にかなりの差異があるが基本構造は変わらない。

[早川豊彦]

分離の機構

円筒部と円錐(えんすい)部からなり、含塵流体は円筒部の側壁から切線方向に供給され、円筒内壁に沿って旋回しながら下降して円錐部に入り、さらに旋回下降して底部に達してから中心部を反転上昇旋回して、上部の出口から排出される。この間、流体中に含まれる粉塵あるいは微小液滴は、遠心力が働いて旋回しながら半径方向に移動して円錐壁に集まり、流体から分離され円錐壁に沿って螺旋(らせん)状に下降し、底部の円錐部頂点から排出される。

 サイクロンは構造が簡単で、可動部もなく保守が容易である。数ミクロン程度の粉塵まで分離できるため広く用いられている。気体サイクロンにおける圧力損失は、水柱100~200ミリメートル、入口風速は毎秒15~20メートル程度である。液体サイクロンの圧力損失は約0.2~4.2気圧、入口風速は毎秒3~15メートル程度で、5~200マイクロメートルの粒子(比重2.5)が分離できるが、動力消費が大きく装置内壁が粒子の摩食を受けやすいなどの欠点がある。

 サイクロンは、形が相似形の場合は、小型のものほど粉塵の捕集効率が高いので、処理流量が大きいときは複数のサイクロンを並列にして用いるマルチクロンmulticloneが用いられる。また、切線方向に流体を吹き込む型のほか、軸方向から含塵流体を吹き込み、案内羽根の回転で旋回運動を与える軸流サイクロンもある。

[早川豊彦]



サイクロン(熱帯低気圧)
さいくろん
cyclone

インド洋に発生する発達した熱帯低気圧性質台風と同じである。世界気象機関(WMO)では、この地域の熱帯低気圧のうち最大風速が毎秒32.7メートル以上(風力12)のものをサイクロンとよぶが、日本の台風の基準と同じ最大風速が毎秒17.2メートル以上(風力8以上)のものをさすことも多い。年間発生数は北インド洋でおよそ2個、南インド洋でおよそ4個(台風なみに発達した熱帯低気圧はおのおの6個、10個)である。台風に比べると発生数も少なく規模も小さいことが多いが、ベンガル湾沿いの地方など人口の密集した低湿デルタ地帯では、サイクロンによる高潮や洪水で大災害が発生することが少なくない。また、一般の低気圧の総称として用いられることがある。

[饒村 曜]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サイクロン」の意味・わかりやすい解説

サイクロン
cyclone

インド洋に発生する熱帯低気圧。よく高潮を引き起こし,バングラデシュなどの低湿デルタ地帯で大きな災害をもたらす。年間発生数は約 10個で,6~11月に発生する。北インド洋(ベンガル湾およびアラビア海)では,その域内の最大風速が 34kn(約 17m/s)以上の熱帯低気圧に Cyclonic Storm,南西インド洋では,その域内の最大風速が 64kn(約 33m/s)以上の熱帯低気圧に Tropical Cyclone,南東インド洋,南太平洋では,その域内の最大風速が 34kn(約 17m/s)以上の熱帯低気圧に Tropical Cycloneという語を用いる。これらの海域で発生し,発達した熱帯低気圧をサイクロンと呼ぶ。

サイクロン
cyclone

遠心力を利用した集塵装置の代表的なものの一つ。微粒子を含んだ流体が円筒状の装置に接線方向に高速で吹込まれると,流体は筒壁に沿って旋回しながら下降する。この旋回流により流体中に含まれる粒子に遠心力が働き,粒子は壁方向に分離され,下方から取出され,流体は中心上部より出ていく。多くの場合流体は気体であるが,流体が液体のものもあり,それを特に液体サイクロンと呼ぶ。

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