知恵蔵 「がん登録制度」の解説
がん登録制度
全国の医療機関はがん患者のデータを各都道府県知事に登録することが義務となり、集まったデータは国立がん研究センターが一元管理し、自治体や医療機関、研究者などが活用して、がん対策やがん治療の質の向上に役立てられる。なお、全国のがん患者のデータベースを構築することは、06年に成立したがん対策基本法並びに、07年策定のがん対策推進基本計画に沿った施策であり、法制化により予算措置が講じられることになった。
全国がん登録で届け出が義務付けられる情報は、(1)がんと診断された人の氏名・性別・生年月日・住所、(2)がんの診断を行った医療機関名、(3)がんの診断を受けた日、(4)がんの種類、(5)がんの進行度、(6)がんの発見の経緯、(7)がんの治療内容、(8)(死亡した場合)死亡日などである。このうち(1)は、同一の患者について重複して登録された場合に情報を統合するために用い、厚生労働省通知により個人情報保護法の適用除外とされている。
がんの予防や原因究明のために患者情報を集積する必要性は、ヨーロッパやアメリカでは古くから認識されていた。制度として実施されたのは1929年のハンブルクでのがん登録が世界で初めてと言われている。日本では51年に東北大学が宮城県で開始した地域がん登録を皮切りに、自治体レベルでの取り組みが広がり、がん登録推進法成立直後の2014年1月時点では47都道府県1市で実施中だった。
また、医療機関が受診までの経緯や、実施した治療法とその成績などを登録するのを院内がん登録という。日本では、がん診療連携拠点病院を中心に実施されており、解析の結果は「がん情報サービス」で公表されている。
(石川れい子 ライター/2015年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報