改訂新版 世界大百科事典 「キタタキ」の意味・わかりやすい解説
キタタキ (木啄)
white-bellied black woodpecker
Dryocopus javensis
キツツキ目キツツキ科の鳥。全長約46cm。クマゲラに似た黒色の大きなキツツキだが,腹,脇,腰が白い。雄は頭頂全部と顎線が鮮紅色をしている。雌は赤色部がまったくない。中国南西部,南アジア,大スンダ列島,フィリピンなどに分布し,さらに東アジアの朝鮮半島中部以南と長崎県対馬にも生息している。東南アジアでは,広葉樹の原生林やマングローブ林にすみ,朝鮮半島と対馬では,針葉樹林や広葉樹と針葉樹の混じった原生林にすむ。キャア,キャアと大声で鳴き,繁殖期には高木の幹に巣穴を掘って営巣する。しかし,この種の生態や繁殖については,よくわかっていない。対馬のものは,天然記念物に指定されているが,1920年10月に最後の標本が採集されて以来,生息が確認されていない。生息環境の広大な原生林がすでに伐採されてなくなっているので,おそらく絶滅したものと考えられている。
執筆者:齋藤 隆史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報