キタヤムシ(その他表記)Sagitta elegans

改訂新版 世界大百科事典 「キタヤムシ」の意味・わかりやすい解説

キタヤムシ
Sagitta elegans

ヤムシ綱ヤムシ科の毛顎動物。北極海に広く分布し,親潮やリマン海流中にごくふつうに見られる。体長4cm内外で細長く,無色透明。頭には8~13対のキチン質顎毛がある。前びれは短く,後びれは前びれよりも大きい。表皮が肥厚した泡状組織は発達が悪く,ほぼ繊毛環と同範囲まで分布している。雌雄同体で,卵巣肛門より前方に,精巣は肛門より後方に,貯精囊尾びれの基部にある。卵巣は後びれの前端をこえることはない。魚類の重要な餌になっている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キタヤムシ」の意味・わかりやすい解説

キタヤムシ
きたやむし / 北矢虫
[学] Sagitta elegans

毛顎(もうがく)動物門矢虫綱無膜目ヤムシ科に属する海産動物。体長4センチメートル以下で、体は硬く、体色は不透明。北半球北部表層に生息するプランクトンで、水塊の指標種として古くから用いられ、その生活史も判明している。1世代の長さは海域によりさまざまで、生息域の水温と密接に関連している。日本近海では親潮を指標する種である。相模(さがみ)湾の深層から少数採集されることがあるが、これは親潮潜流相模湾に到達することを証拠づけている。浮遊性橈脚(とうきゃく)類を摂食する。

[永澤祥子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キタヤムシ」の意味・わかりやすい解説

キタヤムシ
Sagitta elegans

毛顎動物門矢虫綱無膜目ヤムシ科の海産動物。体は体長約 4cmで細長く,無色透明。筋肉がよく発達し,体の両側に前鰭と後鰭が1対ずつ,尾部に尾鰭が1個あってすばやく泳ぐことができる。頭にはキチン質の顎毛が8~13対あり,これで餌を捕える。一生を通じて浮遊生活をし,魚類の重要な餌になる。北氷洋に広く分布し,親潮やリマン海流中にごく普通にみられる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のキタヤムシの言及

【ヤムシ(矢虫)】より

…【今島 実】。。…

【毛顎動物】より

…世界で約110種,うち日本からは33種が知られている。キタヤムシ(イラスト),フクラヤムシ,ヤムシ,マントヤムシ,フトエリヤムシ,ヘラガタヤムシ(イラスト)などが日本近海に広く分布する。【今島 実】。…

【ヤムシ(矢虫)】より

… ヤムシSagitta bipunctata,フクラヤムシS.enflataは各大洋の温暖な水域にもっともふつうで,表層に多産する。キタヤムシS.elegans(イラスト)は北海道やオホーツク海に広く分布し,親潮の指標種になっている。ヘラガタヤムシPterosagitta draco(イラスト)は体長の割合に幅が著しく広いのが特徴で,黒潮水塊の指標種になっている。…

※「キタヤムシ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android