日本大百科全書(ニッポニカ) 「クサヒバリ」の意味・わかりやすい解説
クサヒバリ
くさひばり / 草雲雀
[学] Paratrigonidium bifasciatum
昆虫綱直翅(ちょくし)目コオロギ上科クサヒバリ科に属する昆虫。黄褐色の淡い小形のコオロギで、体や脚(あし)などに黒褐色の筋(すじ)やまだらがある。雄は美しい鳴き声を発するので、古くから鳴く虫の一つに数えられ、虫屋でも珍重される。クサヒバリとは、草の間にすむ虫ながら、その鳴き声が鳥のヒバリに比肩できるほどのものだという意。体形はマダラスズ型であるが、触角や後ろ脚ははるかに長い。体長は6~8ミリメートル。頭部複眼間の横縞(よこじま)、前胸背板に点と横縞の黒褐色部がある。前胸背板には剛毛が生えている。雄の前翅は楕円(だえん)状をしており、数個の黒褐色斑(はん)があり、発音鏡は幅広く、斜状脈は1本。また前翅の側部には雌雄とも太い縦帯がある。後ろ脚の腿節(たいせつ)は細長く伸び、その脛節(けいせつ)も長く、針のように細い。雌の産卵管は剣状で、背方に反っている。年1化性で、卵で越冬する。成虫は7月から出現し、10月までみられ、庭木や生け垣上、また林縁部のマントル植物中などに好んですみ、昼間からチリリリリ……という美しい声で鳴く。本州から台湾にかけ分布し、朝鮮半島にもいる。
[山崎柄根]