クルマダイ(読み)くるまだい(英語表記)whiteband bigeye

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クルマダイ」の意味・わかりやすい解説

クルマダイ
くるまだい / 車鯛
whiteband bigeye
[学] Pristigenys niphonia

硬骨魚綱スズキ目キントキダイ科に属する海水魚。北海道南部から九州南岸までの太平洋沿岸と新潟県佐渡(さど)から九州北西岸までの日本海沿岸、東シナ海、台湾、フィリピン、ボルネオ島、セレベス島スラウェシ島)、オーストラリア北東岸、サモア諸島などの西太平洋と、ジャワ島やオーストラリア北西岸のインド洋に分布する。体は高くて側扁(そくへん)し、体高体長の49~62%。成長につれていくぶん低くなる。目はきわめて大きく、頭長のおよそ半分。両眼間隔域は狭い。後鼻孔(こうびこう)は大きくて、三角形状。口は大きく斜位で、上顎(じょうがく)の後端は瞳孔(どうこう)の前縁下に達する。主上顎骨後端の幅は広い。下顎は上顎より突出する。上下両顎に幅の広い絨毛(じゅうもう)状の歯帯があり、上顎の外列歯はいくぶん大きい。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の下縁と後縁にやや強い鋸歯縁(きょしえん)があり、隅角(ぐうかく)部に小さい棘(きょく)が1本ある。全鰓耙(さいは)数は27~31本。体と頭部ははがれにくい小さな櫛鱗(しつりん)で覆われる。両眼間隔域、主上顎骨、頬(ほお)および鰓条膜に鱗(うろこ)がある。体側鱗の後縁にある鋭くとがった小棘は成長につれていくぶん弱く薄くなる。背びれは10棘10~11軟条で、背びれ棘は太く、第4棘が最長。軟条部基底長はきわめて短く、棘部基底長の半分以下。臀(しり)びれは3棘9~10軟条で、第3棘が最長。尾びれの後縁は丸い。腹びれは短くて、臀びれ始部に達しない。頭部と体は濃赤色で、5本の淡色横帯があり、第1帯は鰓蓋骨上に、第5帯は尾柄(びへい)部の後端に位置する。帯の幅は太くて瞳孔の2分の1~5分の3倍であるが、成長とともに細く、不鮮明になる。若魚では背びれ棘とその鰭膜(きまく)の前部は黒いが、成魚では赤い。背びれと臀びれの軟条部および尾びれの後縁は黒くない。腹びれの先端の3分の1は黒い。水深50~230メートルの岩礁域やその周辺域の砂底域に生息し、甲殻類魚類を食べる。2センチメートルくらいの稚魚表層に、幼魚は浅所にいる。体長は19センチメートルほどになる。釣りや底引網で漁獲され、煮つけ、塩焼きにすると美味である。

[片山正夫・尼岡邦夫 2021年2月17日]


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改訂新版 世界大百科事典 「クルマダイ」の意味・わかりやすい解説

クルマダイ (車鯛)
Pristigenys niphonia

スズキ目キントキダイ科の海産魚。房総半島,江の島でカゲキヨ,高知県でカネヒラ,和歌山県田辺でキントキまたはマンネンダイ,鹿児島県でヒレダイと呼ぶ。南日本からフィリピン,東インド諸島,アフリカ東岸に広く分布している。全長30cm近くになる。体は卵形で,強く側扁している。体高は高い。うろこは粗雑な櫛鱗(しつりん)。腹びれは大きく,その末端はしりびれの基部に達する。体側には5本の幅広い赤色横帯がある。この模様は成魚になると不明りょうになる。腹びれの先端近くは黒色。肉食で,底生性である。底引網で漁獲されるが,近縁のチカメキントキのようにまとまってとれることはない。そのため煮付けなどとして食用になるがあまり利用されない。日本から同属にはオキナワクルマダイP.multifasciataが知られているが,体側に10本以上の細い赤色横帯があることにより容易に区別される。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クルマダイ」の意味・わかりやすい解説

クルマダイ
Pristigenys niphonia

スズキ目キントキダイ科の海水魚。食用。全長 30cm内外。体は側扁し,体高は著しく高い。背鰭棘は強大で,腹鰭は大きい。体の上部は紅色,下部は銀白色で,幼魚には体側に黒色の横帯がある。鱗は大きく櫛鱗。眼も非常に大きい。南日本に分布する。

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世界大百科事典(旧版)内のクルマダイの言及

【マトウダイ(的鯛)】より

…平たく長卵形をした体の側面ほぼ中央に淡色で縁どられた大黒斑があり,的を思わせるのでこの名がある。地方によりマトハゲ,クルマダイ,モンダイ,ツキノワなどとも呼ばれる。体色は暗灰色,表面は細かいうろこでおおわれる。…

※「クルマダイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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