クロス・レート(読み)くろすれーと(英語表記)cross rate

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロス・レート」の意味・わかりやすい解説

クロス・レート
くろすれーと
cross rate

基準為替(かわせ)相場を基にして、2国間の為替相場を導き出すのに利用される第三国間の為替相場をいう。通常の場合は、自国通貨ともっとも取引が多く、基軸通貨のような国際的に受容性が高い通貨との為替相場を基準為替相場として、ほかの通貨との為替相場を建値することが多い。たとえば、円と各国通貨との為替相場を決めようとする場合、日本では対米ドル為替相場を基準為替相場とし、ほかの通貨と米ドルの為替相場を、それぞれ組み合わせて算出している。このとき、ほかの通貨の対米ドル為替相場をクロスレートといい、基準為替相場とクロス・レートによって算出された円と米ドル以外の通貨との為替相場を裁定為替相場とよんでいる。

 具体的には、基準為替相場である対米ドル為替相場が1ドル=100円であり、クロス・レートであるユーロの対米ドル為替相場が1ユーロ=1.2ドルであれば、円とユーロの裁定為替相場は1ユーロ=120円と計算される。

 従来は、この定義が一般的であったが、実務家の間では、異なる意味で使用するケースが目だっている。そこでは、基軸通貨ドル以外の通貨同士の為替相場を意味している。すなわち、従来の古典的定義でいえば、裁定為替相場(上記事例の1ユーロ=120円)をクロス・レートとよんでいる。

 1979年にヨーロッパ通貨制度が創設され、1980年代末にはヨーロッパの外国為替市場で米ドルが為替媒介通貨の地位を失い、ドイツ・マルクを中心に、ヨーロッパ通貨間の直接取引が増大したが、これをクロス取引、その為替相場をクロス・レートとよんでいるからである。さらには、国際決済銀行(BIS)の下で、各国の中央銀行が外国為替市場の取引の調査を行っているが、そこでも「米ドルを対貨としない取引」すなわち、ドル以外の通貨同士の直接取引をクロス取引としている。これは、世界全体の外国為替取引においてクロス取引は、最大の「円・ユーロ取引」でさえわずかに5%内にとどまっているものの、米ドルの為替媒介通貨機能の侵食象徴として、注目されているからである。

 したがって、後者の意味のクロス・レートには、直接取引がないため二つの通貨の対米ドル為替相場から計算により決められるものと、実際に直接取引による需給で決まっているものがある。

[中條誠一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クロス・レート」の意味・わかりやすい解説

クロス・レート
cross rate

一般に米ドル以外の通貨と日本円との裁定為替相場は,(1) 米ドルと日本円との間の相場と,(2) 米ドルと当該通貨との間の相場より算出されるが,後者の相場をクロス・レートと呼ぶ。たとえば,日本円のドイツマルクに対する相場を対米ドル基準相場で裁定する場合には,米ドルの対ドイツマルク相場がクロス・レートであり,1ドル=120円,1ドル=1.5マルクとすると,120÷1.5=80で1マルク=80円が裁定相場となる。

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