クロマグロ規制(読み)クロマグロきせい

百科事典マイペディア 「クロマグロ規制」の意味・わかりやすい解説

クロマグロ規制【クロマグロきせい】

クロマグロ(通称ホンマグロ)は全長3m,体重350kgにもなる大型回遊魚で,全世界の年間漁獲量のうち,過半数が日本で消費されている。日本近海に多いが,赤道を中心に北緯45°〜南緯45°の温暖な海域に広く分布する。全マグロ類の年間総漁獲量130万tのうち,減少の続くクロマグロの漁獲量は3万tにすぎない。マグロ漁全体の規制強化が図られるなかで,クロマグロに特に厳しい規制が求められている。 大西洋マグロ類保存国際委員会(ICCAT)は,便宜置籍船(べんぎちせきせん)の無秩序な操業によりマグロの保存・管理が支障をきたしているとして,船籍を与えている国からの大西洋クロマグロの輸入禁止を勧告。1992年3月の第8回ワシントン条約締約国会議(京都)では,クロマグロ漁獲量を1991年の50%に自主規制すること,さらにICCATに対し,国際取引の監視,長期的な資源回復計画の作成,資源の状態と資源の保存管理措置のワシントン条約事務局への報告などが決定された。 このように国際的にクロマグロ規制が強まるなか,日本では1996年6月〈マグロ資源保存・管理特別措置法〉が成立。国際機関ルールを守らない国からのマグロの輸入を制限するなど,世界一のクロマグロ消費国である日本が自らを規制した。日本ではクロマグロの種苗生産・放流による資源拡大のための技術開発にも着手している。→水産物貿易
→関連項目ストラドリング・ストックマグロ(鮪)

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知恵蔵 「クロマグロ規制」の解説

クロマグロ規制

絶滅危惧(きぐ)があるとして、1990年代以降、クロマグロ(本マグロ)の国際商取引の規制を強化する動きが高まっている。クロマグロは、主に北太平洋・北大西洋の中緯度の海域に分布する回遊魚。スズキ目サバ科に属し、若魚はヨコワの名で知られる。世界の消費量の7~8割を日本が占めている。ただしマグロ全体では、メバチマグロキハダマグロがほとんどで、高級なクロマグロの国内消費量は数%程度に過ぎない。そのため、規制による直接の影響は小さいと見られている。
大西洋マグロ類保存国際委員会(ICCAT)の報告書(2008年度)によると、大西洋・地中海産のクロマグロの資源量は推計約7~8万トン。1970年代前半の約30万トンから、4分の1近くまで減っている。これまでICCATはワシントン条約締約国会議の決議等を受け、産卵親魚・小型魚の漁獲禁止、漁獲量規制、畜養の許可制度の設置など、国際取引の監視と長期的な資源回復に取り組んできた。
しかし、自主規制や限定的な措置では絶滅を回避できないとして、2009年10月、モナコがワシントン条約の「国際商取引の全面禁止種リスト」に、同海域のクロマグロを加えるよう提起した。これは、ワシントン条約の3段階の規制の中で最も厳しい項目で、ジャイアントパンダやシーラカンスなどと同種に含められることになる。
翌10年3月、カタールで開催されたワシントン条約締約国会議では、モナコ案に米国とEU諸国が支持を表明し、規制反対の日本は劣勢に立たされた。しかし、水産利権を欧米諸国に囲われることを危惧(きぐ)した北アフリカの漁業国や、マグロ消費量が急増している中国などが日本に同調。規制案は、反対68、賛成20、棄権30の反対多数で否決された。この結果に、米政府は「クロマグロにとっては敗北である」という声明を発表。国際NGO世界自然保護基金(WWF)やグリーンピースも「資源回復よりも経済利益が優先された」などと、強い失望の意を表明している。

(大迫秀樹   フリー編集者 / 2010年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クロマグロ規制」の意味・わかりやすい解説

クロマグロ規制
クロマグロきせい

日本人になじみの深いクロマグロ (ホンマグロ) 漁の自主規制。 1991年 10月,スウェーデン政府が種の保存を名目に,西大西洋のクロマグロの国際取引禁止をワシントン条約の付属書Iに,東大西洋のクロマグロ漁の許可制を付属書 IIに規定するよう提案し,92年3月に開かれた同条約締結国会議で議題に上った。日本,アメリカなどの大西洋マグロ類保存国際委員会 (ICCAT) は,調査の結果,絶滅のおそれはないと撤回を求めていた。結局,漁業国が漁獲量を 91年レベルの 50%に自主規制することで,提案は撤回された。

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