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便宜置籍船 べんぎちせきせん

ASCII.jpデジタル用語辞典の解説

便宜置籍船

船を所有する個人、会社が所在する国(自国)ではない外国に、便宜上、船籍をおいている船のこと。リベリアパナマバハマなどが代表的な国で、理由には、外国の方が船籍に課される税金が安い、場合によっては自国の法律の適用を免れる、などがある。近年、マグロ漁業における、便宜置籍船のIUU(不法行為、無規制、無法国)が問題になっており、ICCAT(大西洋マグロ類保存国際委員会)やCCSBT(南マグロ保存委員会)によって、便宜置籍船の操業を抑止する対策がとられている。マグロ漁業のIUUには、日本の中古船を改造した台湾籍の船が多いといわれている。

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デジタル大辞泉の解説

べんぎ‐ちせきせん【便宜置籍船】

船主が船籍を、税金や船員の資格・労働条件などの面で有利な外国に登録している船。置籍国はリベリア・パナマなどが多く、船主の国籍では米国・ギリシャ・日本など、船種ではタンカーが多い。

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百科事典マイペディアの解説

便宜置籍船【べんぎちせきせん】

税制その他で自国より有利な外国に船籍をおく船。大型船に多く,リベリアが外国船船籍誘致政策をとり,ギリシア系船主がこれを利用して移籍したのに始まる。便宜置籍国としてはほかにパナマ,ホンジュラスなどがある。
→関連項目クロマグロ規制パナマ(国)リベリア

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保険基礎用語集の解説

便宜置籍船

FOC船ともいいます。船舶に対する優遇税制や船員配乗等の緩和により、先進国船社の誘致、置籍を図っているリベリア、パナマ、バハマ等の国に便宜的に船籍を置く船舶のことを指します。わが国においては、1960年代半ばに海外競争力を失った在来貨物船を便宜置籍国に転売し、これに発展途上国船員を配乗させて再びわが国外航海運企業が用船して運航したことに始まります。

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世界大百科事典 第2版の解説

べんぎちせきせん【便宜置籍船】

船舶は人間と同じように,国際法(〈1958年公海条約〉第5条)の定めによって国籍(船籍)をもたなければならないが,税制その他で自国より有利な外国に船籍を置く場合,これを便宜置籍船flag‐of‐convenience vessel(FOCと略称)という。 すべての船舶はいずれかの国に登録され,その登録国(船籍国または置籍国ともいう)の法律によって各種の規制を受けると同時に保護される。しかし,各国の自国籍船に対する船舶安全基準,乗組員配乗規則,税制などの規制,あるいは自国籍船に対する法的権利の擁護,税制優遇,船舶建造融資,補助金給付などの保護措置の内容は,国によって異なる。

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大辞林 第三版の解説

べんぎちせきせん【便宜置籍船】

節税、人件費抑制、船舶に対する様々な規制の回避などのために、実際の船主の国ではない国に船籍を置いている船舶。 FOC 。 → 旗国

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

便宜置籍船
べんぎちせきせん
convenience flagship

船舶にかかる船舶登録税,財産税,収益税などの経費の節減をはかるため,船主が便宜的に,税金が安く,船員法などによる運航規則も軽い国に船籍をおいている船。海運業界で古くから行われてきた慣行で,特に第2次世界大戦後,リベリア,パナマ,ソマリア,ホンジュラス,レバノン,キプロス,バハマ,バミューダ,シンガポールなどの小国が外国資本の会社設置を容易にする会社法を制定し,低廉な船舶税と各種の法的規制を緩和することによって外国船会社および外国船の誘致政策をとったため,アメリカやギリシア系船主の利用するところとなった。リベリアはこのため世界最大の船舶保有国となり,特にタンカー,バルカーの船腹量が大きい。なお,便宜置籍船に対しては,英欧伝統海運国の使用者側からは正常な自由海運の市場競争を攪乱するという理由により,また労働者側 (国際運輸労連 ITF) からは「乗組員に対して劣悪な労働条件を強いる」などの理由により,反対されてきたが,第2次世界大戦後の先進諸国における船舶・造船分野の技術革新と諸経費の高騰が船主経済を圧迫し,船主が税金避難地として便宜置籍国を求めて所有船舶の海外置籍を促した。先進国の便宜置籍船が増加することに対して,自国船隊の整備が阻害されるとして,発展途上国からの反対があり,便宜置籍船問題は政治色の強い問題となっている。 1991年時点の船腹量保有国の1,2位はリベリア (国別保有シェア 19.2%) とパナマ (同じく 10.1%) で占めており,その大半は国外船主による登録といわれている。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

便宜置籍船
べんぎちせきせん
flag-of-convenience vessel

略称FOC。船主が船籍を便宜的に外国に置いた船舶をいう。パナマをはじめ、リベリア、バハマ、マーシャル諸島、シンガポール、マルタ、キプロスなど12か国に、外国船主が船籍を登録することで、創・廃業、租税制、資金調達・移送、船員雇用、安全規制などに関して、さまざまな便宜を享受している不公正な保有・運航形態の船舶である。
 外国置籍は古くからみられたが、便宜置籍船の起源は、第二次世界大戦後、アメリカが余剰になった戦時建造船の海外売却にあたって、有事の際、自らの統制下に入れるため便宜置籍国への移籍を条件とし、また民間船のそれへの移籍をも奨励したことにある。当初、その実質所有者は、アメリカの石油メジャーやギリシアの海運王オナシス(1906―75)などであったが、1970年代に入って、それを不公正な競争者と批判してきた先進国も利用するようになり、急激に増加した。2008年の世界の便宜置籍船は1万2553隻、4億0151万総トンで、世界船腹の56%を占める。その内訳は、パナマ39%、リベリア17%、バハマ10%、マーシャル諸島8%、シンガポール8%となっている。また、おもな実質所有国は、重量トン数で、ギリシア17%、日本15%、ドイツ9%、ノルウェー、アメリカ、香港(ホンコン)がそれぞれ5%、韓国、イギリス、シンガポールがそれぞれ3%となっている。日本は、日本籍船の約5倍にも及ぶ便宜置籍船を保有している。
 第二次世界大戦後、アメリカは世界の原燃料資源を支配したが、先進国の国内資源と競争しながらそれを大量に売り込むためには、輸出価格に対して高い比率となる海上運賃を引き下げる必要があった。その際、自国船よりも費用のかからない船腹の保有・運航・建造方式が求められ、便宜置籍船が発生した。それを通じてアメリカ海運は多国籍企業として成長していった。戦後、日本はアメリカの原燃料資源の最大の輸入国となったため、荷主や海運企業は便宜置籍船を大量に用船するようになった。さらに、日本輸出入銀行(現、国際協力銀行)は便宜置籍船に有利な延払い融資を与え、造船企業はそれを大量に建造し、その発達を促進した。便宜置籍船の産みの親はアメリカであったが、日本は育ての親となった。
 便宜置籍船は、実質所有国では船員雇用の縮小、労働条件の悪化、財政圧迫、国民福祉の低下、中小企業の経営困難、国際的には海難・海洋汚染の拡大、不安定雇用船員の増大、開発途上国海運の圧迫など、多くの悪影響がみられる。それに対して、国際運輸労連(ITF)はボイコット闘争を展開しており、国際労働機関(ILO)は「商船の最低基準に関する条約」、国際海事機関(IMO)は「船員の訓練、資格証明および当直維持の基準に関する国際条約」(STCW条約)を採択し、国際規制に取り組んでいる。国連貿易開発会議UNCTAD(アンクタッド)では、開発途上国海運の発達のため、便宜置籍船の廃絶に向けて討議が行われてきた。しかし、多様な船主国による便宜置籍利用の拡大と新自由主義的な風潮のもとで、便宜置籍船の廃絶は暗礁に乗り上げている。[篠原陽一]
『国連報告書、竹本正幸訳『便宜置籍船と多国籍企業』(1979・ミネルヴァ書房) ▽篠原陽一編著『現代の海運』(1985・税務経理協会) ▽水上千之著『船舶の国籍と便宜置籍』(1994・有信堂) ▽武城正長編著『国際交通論』(1998・税務経理協会)』

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世界大百科事典内の便宜置籍船の言及

【海運業】より

…第1次大戦前イギリスの貿易額は世界貿易額の40%を占め,同時にイギリスの船腹総量は世界船腹量の45%に達していた。また1960年代平均17.6%という世界最高の貿易成長率を誇った日本は,1969年イギリスを抜いて世界最大の船主国(便宜置籍船国リベリアを除く)となった。 しかし,貿易の拡大(工業化の進展)と海運業の発展がつねに相伴うとは限らない。…

【旗国法】より

…ところが,この旗国の税制・労働法制その他の行政的監督・統制を逃れるため,船主は自己に有利な法制をもつ国を選んで登録をすることがある。いわゆる便宜置籍(便宜置籍船)であって,この場合の国旗はflag of convenienceという。こうした便宜置籍を受けいれることで有名なのはパナマ,リベリア,ホンジュラスの諸国である。…

【リベリア】より

… リベリアは船舶に対する税金を安くしているため,外国の船主が便宜上船籍をリベリアに置くことが多く,船籍登録による収入は国家財政の約10%を占めている。この便宜置籍船制度によってリベリアは1992年まで世界一の商船保有国であるが,93年にはパナマが1位となった。95年の登録船舶トン数は9229万1000トンである。…

※「便宜置籍船」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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