グリゴロービチ(その他表記)Yurii Nikolaevich Grigorovich

改訂新版 世界大百科事典 「グリゴロービチ」の意味・わかりやすい解説

グリゴロービチ
Yurii Nikolaevich Grigorovich
生没年:1927-

ロシアの舞踊演出家。1946年レニングラード舞踊学校卒業,キーロフ劇場のソリストであるかたわら振付演出にも意欲を示し,プロコフィエフの《石の花》(1957),A.D.メーリコフの《愛の伝説》(1961)の演出によって非凡な才能を認められた。これらの作品のボリショイ劇場上演後,1964年同劇場の首席バレエマスターとなり,まず古典の新演出に着手,チャイコフスキーの三大バレエを現代の論理,思考,感覚に合致するよう改訂上演した。一方,ハチャトゥリヤンの《スパルタクス》,プロコフィエフの《イワン雷帝》,A.エシパイの《アンガラ》の新作上演に成功した。彼は古典バレエの語法と伝統を継承しながら,フォークロアの摂取,アクロバットとスポーツの要素の消化によって踊りの語彙を豊かにし,登場人物の心理の変化と劇の進展に論理性を与え,音楽に内在する理念と詩情交響楽的に展開する手法をあみだすなど,ソビエト・バレエに新しい時代を開いた。
執筆者:


グリゴロービチ
Dmitrii Vasil'evich Grigorovich
生没年:1822-99

ロシアの作家。バルザックジョルジュ・サンドなどヨーロッパの〈農民小説〉の影響のもとに,ロシア最初の農民小説《村》(1846),《不幸なアントン》(1847)を書く。農民(ナロード)を主人公とし,それを共感をもって描くという手法は,ツルゲーネフに大きな影響を与えたが,彼はこの2作により,ゴーゴリによって代表される文学上の新流派〈自然派〉の最も重要な作家とみなされた。工科学校出身だった彼は,学校の後輩ドストエフスキー文壇に出したが,その40年後チェーホフを発見するという大きな貢献をロシア文学史に対して果たした。美術批評家としての仕事もあるが,成功しなかった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「グリゴロービチ」の意味・わかりやすい解説

グリゴロービチ(Yuriy Nikolaevich Grigorovich)
ぐりごろーびち
Юрий Николаевич Григорович/Yuriy Nikolaevich Grigorovich
(1927― )

ロシアのバレエ振付師。サンクト・ペテルブルグ生まれ。1946年にレニングラード(現サンクト・ペテルブルグ)舞踊学校卒業後、同バレエ団ソリストに昇格した。若くして振付師となり、プロコフィエフの原譜を忠実に再現した『石の花』(1957)で脚光を浴びた。台本も書き、総合芸術としてのバレエを標榜(ひょうぼう)している。1961年からキーロフ・バレエ団(現マリンスキー劇場バレエ団)、1964年からボリショイ・バレエ団の芸術監督となった。『くるみ割り人形』『白鳥の湖』『眠れる森の美女』の改訂版を上演したほか、『スパルタクス』『黄金時代』『イワン雷帝』などを振り付けた。夫人はボリショイのバレリーナ、ベスメルトノワNatalia Bessmertnova(1941―2008)。1966年にソ連人民芸術家、1970年レーニン賞受賞。

[國吉和子]


グリゴロービチ(Dmitriy Vasil'evich Grigorovich)
ぐりごろーびち
Дмитрий Васильевич Григорович/Dmitriy Vasil'evich Grigorovich
(1822―1900)

ロシアの小説家、美術評論家。作風は写実主義的傾向。シンビルスクの地主貴族の家に生まれる。母は亡命フランス人。ペテルブルグ陸軍工兵学校(ここでドストエフスキーを知る)、のち美術学校に学ぶ。中編小説『村』(1846)、『不幸者アントン』(1847)が代表作。農民の悲惨な生活を描いて、ツルゲーネフ『猟人日記』に先んじた。長編小説に『漁夫』(1853)、『移住者』(1856)があり、民俗学的資料に富む。後期の代表作に、少年軽業(かるわざ)師の悲劇的な運命を描いた中編『ゴム少年』(1883)がある。

[佐々木彰]

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世界大百科事典(旧版)内のグリゴロービチの言及

【ボリショイ・バレエ団】より

…30年代の半ばから独ソ戦時代にかけてレペシンスカヤOl’ga Vasil’evna Lepeshinskaya(1916‐ )をはじめ多くの人材が成長し,上演目録も多彩なものとなり,戦後はウラノワの移籍,50年代後半からは国外公演によってその声価はさらに高まった。64年にはYu.N.グリゴロービチを芸術監督に迎え,チャイコフスキーの三大バレエをはじめ古典の改訂,《スパルタクス》その他の新作によって現代人の共感を得た。一方,プリセツカヤは自作自演の《カルメン》《アンナ・カレーニナ》によって新境地をひらくなど,同バレエ団は世界最高を誇る250名の踊り手,多彩な演目と豪華絢爛たる演出によって世界を魅了した。…

※「グリゴロービチ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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