猟人日記(読み)リョウジンニッキ(英語表記)Записки охотника/Zapiski ohotnika

デジタル大辞泉 「猟人日記」の意味・読み・例文・類語

りょうじんにっき〔レフジンニツキ〕【猟人日記】

原題、〈ロシアZapiski okhotnikaツルゲーネフ短編集。1852年に22編で刊行、1880年に3編が追加され、全25編となる。ハンター見聞録かたち農奴の悲惨な生活と高貴な魂とを描き、農奴解放に大きな影響を及ぼした。
戸川昌子ミステリー小説。昭和38年(1963)刊行。同年の第50回直木賞候補作となる。昭和39年(1964)公開の中平康監督による映画化作品には、著者自身も出演している。

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精選版 日本国語大辞典 「猟人日記」の意味・読み・例文・類語

りょうじんにっきレフジン‥【猟人日記】

  1. ( 原題[ロシア語] Zapiski ohotnika ) 短編小説集。ツルゲーネフ作。一八五二年刊。八〇年に三編追加。作者出世作というべき作品で、中部ロシアの自然背景に農奴の生活、人間性を豊かに描出した二五編の短編を集める。そのうちの二編を二葉亭四迷が訳したものが「あひゞき」「めぐりあひ」で、近代日本文学に大きな影響を与えた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「猟人日記」の意味・わかりやすい解説

猟人日記
りょうじんにっき
Записки охотника/Zapiski ohotnika

ロシアの作家ツルゲーネフの、25の独立した短編からなる小説集。22編は1847~52年に発表され、80年新たに三編を追加、現行のものとなる。作者はこの作品によって散文作家としての地位を確立した。中部ロシアのオリョール地方を舞台に、ハンターが道中で見聞したことをスケッチするという形式をとる。農奴体制下のロシア農民の生態がきわめて写実的に描かれ、背景をなす美しい自然と相まって、全編に詩情が漂っている。この書を読んでアレクサンドル2世は、農奴制廃止を決意したといわれる。農村小説の先例としてはグリゴロービチの作品があるが、それは過酷な農村の現実描写に優れるものの、暗すぎて救いがない。同じ田園小説にしても、フランスのジョルジュ・サンドの小説は、農村が美化され、理想化されすぎて、現実を離れた牧歌的なものとなっている。『猟人日記』の特色は、現実をまともに見つめながら、しかもなお叙情性を失わないところにある。農民のうちにある高貴な品性や、優れた才能や、民間伝承の詩的世界について語ることにより、かえって農奴制がどんなに人間を疎外する非人道的なものであるかを、強く印象づけたのである。このなかの一編『あひゞき』は二葉亭四迷(しめい)の名訳で知られる。

[佐々木彰]

『『猟人日記』(工藤精一郎訳・新潮文庫/佐々木彰訳・岩波文庫)』『『あひゞき』(『二葉亭四迷全集1』所収・1964・岩波書店)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「猟人日記」の意味・わかりやすい解説

猟人日記
りょうじんにっき
Zapiski okhotnika

ロシアの小説家 I.ツルゲーネフの小説集。 1852年刊。ロシアの美しい田園を背景に,農奴制下の農民の姿をスケッチ風に描いた短編 25編を収める。二葉亭四迷の名訳『あひゞき』 (1888) ,『めぐりあひ』 (88~89) は,国木田独歩をはじめ日本の近代の作家に多くの影響を与えた。 (→あいびき )  

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旺文社世界史事典 三訂版 「猟人日記」の解説

猟人日記
りょうじんにっき

トゥルゲーネフの文名を高めた短編小説
1847年から雑誌に発表されたものをまとめて刊行(1852)。当時のロシア社会の地主・農民の状況をスケッチした内容で,農奴制を批判したためにトゥルゲーネフは流罪となった。

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世界大百科事典(旧版)内の猟人日記の言及

【ツルゲーネフ】より

… 彼は批評家ベリンスキーによって詩を断念させられ,戯曲に転じ,《村のひと月》(1850)など心理劇数編を書いた。チェーホフ劇の先駆となる作品で時代に先んじていたために理解されず,散文に移り,短編集《猟人日記》(1852)で文名を高め,文壇的地位を確立した。これは農奴制に対する芸術的抗議として読まれ,農奴解放に大きな役割を果たした。…

※「猟人日記」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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