改訂新版 世界大百科事典 「ケシキスイ」の意味・わかりやすい解説
ケシキスイ
sap beetle
甲虫目ケシキスイムシ科Nitidulidaeに属する昆虫の総称。世界から約2500種,日本から約150種が知られている。体型は一般に卵形でやや平たく,小型の種類が多い。触角は先端の3節が幅広い。生態的な特徴は種類によって食性が多岐にわたること,食餌や寄主に高密度の大集団をつくること,土中に潜って蛹化(ようか)することである。食性を大別すると成虫,幼虫とも花を食べるもの,成虫が花に集まり幼虫が熟した果実を食べるもの,成虫は花に集まり幼虫はキノコを食べるもの,成虫,幼虫ともキノコを食べるもの,成虫,幼虫とも熟した果実を食べるもの,成虫,幼虫とも樹液を食べるもの,成虫は樹液や果実を食べ,幼虫が肉食性(捕食性)のものなどとなる。ヨツボシケシキスイLibrodor japonicusの成虫は体長が14mmに達し,日本産の種では最大。黒色の体は上翅に赤色の4紋がある。幼虫とともにクヌギなどの樹液に見られる。クリヤケシキスイCarpophilus hemipterusは体長が約3mm。貯蔵穀類の害虫として知られる。またモンチビヒラタケシキスイHaptoncus ocularisは体長が約2.5mm。果実の害虫として知られる。この科の幼虫はやや平たい円筒形で胸脚があり,腹部末端節に1対の尾突起と1対の小突起をもつものが多い。また気門が突出するものも多い。幼虫期間は一般に短い。
ケシキスイムシ科には尾部が翅から露出するものが多いことから,かつてはデオキスイムシ(出尾木吸虫)科と呼ばれていた。クリヤケシキスイが所属するCarpophilinae亜科には体の小さい種が多いことからケシオキスイ亜科(ケシはケシ粒,オは出尾の尾を指す)と名付けられ,後に科名もケシキスイとなった。
キスイムシ科,キスイムシモドキ科,オオキスイムシ科,ムクゲキスイムシ科には,いずれも木吸虫の漢字が用いられる。木吸の語源は木を吸う(樹液を吸う)に由来すると考えられるが明らかでない。
執筆者:林 長閑
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報