オーストラリア東部や南東部などの森林地帯に主に生息する有袋類。背面が灰色、腹部は白い毛にそれぞれ覆われ、体が小さい北方系と大きい南方系がいる。オスは胸から出すにおいを生活する木にこすり付けて縄張りを示す。メスは腹部の袋の中で赤ちゃんを育児する。日本では2019年11月時点で、7カ所の動物園で飼育されている。野生では絶滅の危険が増しており、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは絶滅危惧種の一つ「危急種」に指定されている。
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オーストラリア固有の樹上生有袋類。ユーカリ類の一部の木の葉しか食べない特異な食性をもつことで知られている。コモリグマ,あるいはフクログマともいう。クマに似た体に,大きな丸い頭をもち,耳には長い毛が密生する。有袋目コアラ科の哺乳類。体長60~85cm,体重は雄で平均10.4kg,雌で8.2kg。最高15kg。尾は痕跡的。体色は背側が灰色,腹側は白で,毛は羊毛状に密生する。腹部の育児囊は下方に開口し,中に2個の乳頭がある。前足の第1,2指は他の3指と対向し,後足の第1指も他の4指と対向しており,木の枝などを握り,樹上で体を保持するのに適している。
オーストラリア南東部のユーカリの森林に生息し,300種を超えるユーカリ類のうち,特定の12種のユーカリの成葉だけを食べる(したがって,コアラの飼育にはユーカリの植樹が前提になる)。夜行性で巣はつくらず,昼は木のまたなどで眠り,夜間樹上で採食する。動きは鈍くほとんど木から降りることはない。特殊化した食性と,そのゆったりとした生活ぶりは南アメリカのナマケモノによく似ているといえる。堅く繊維分の多い木の葉を消化するため,盲腸は1.8~2.5mもの長さに発達している。また離乳時の幼獣は,葉を消化する能力をもたないためか,母親の肛門に口をつけて,半ば消化された緑便を食べるという離乳の中間段階を1ヵ月ほど必要とする。ふつう単独でテリトリーをつくって生活し,繁殖期には1頭の雄が複数の雌とともに過ごす。雌は27~35日の妊娠期間の後,0.36gのごく小さな子を出産。子は6~7ヵ月育児囊で育てられる。さらに約6ヵ月間母親に背負われてくらし,3~4年で成熟する。森林が破壊されたためと優美な毛皮を取るための乱獲がたたって生息数は大幅に減少したが,現在は保護されている。
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
哺乳(ほにゅう)綱有袋目クスクス科の動物。コモリグマ、フクログマ、キノボリフクログマともいう。オーストラリア南東部に分布する。頭胴長60~80センチメートル、体重4~15キログラム、尾はほとんどない。鼻鏡は大きく裸出する。前足、後ろ足ともに5本の指がある。前足の第1、第2指はほかの指に対向し、枝を握るのに適している。後ろ足の第1指は短くて太くつめを欠き、ほかの指に対向し、第2、第3指は結合する。雌の腹部には育児嚢(のう)があり、後方に開口し、内部に2個の乳頭がある。体毛は羊毛状で密生し、上面は暗灰色、下面は灰白色である。盲腸は哺乳類中もっとも長く、体長の約3倍で2.4メートルもある。
樹上生で、ユーカリの森林地にのみ生息する。夜行性で、昼間は木の叉(また)などで休息し、夜その葉を食べる。コアラが食指を動かすのは、600種ほどあるユーカリ類のうち、わずか35種ほどである。単独で生活することが多く、性質はおとなしく、動作も緩慢である。妊娠期間約35日で、普通1頭の子を産む。子は未熟な状態で産まれ、頭胴長1.7~1.9センチメートル、体重1グラム以下、毛は生えていない。育児嚢内で数か月育てられ、その後約半年は雌親に背負われている。離乳時に、雌親の肛門(こうもん)に口をつけて、なかば消化したユーカリの葉の特殊な軟便を離乳食として食べる。寿命は15~20年。1985年現在、オーストラリア以外では、アメリカのサン・ディエゴ動物園、ロサンゼルス動物園と日本の東京都多摩動物公園、名古屋市東山動植物園、鹿児島市平川動物公園で飼育されている。日本へきたのは1984年(昭和59)10月である。毛皮のために乱獲されて数が減ったので、現在は保護されている。
[中里竜二]
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出典 小学館の図鑑NEO[新版]動物小学館の図鑑NEO[新版]動物について 情報
…オーストラリアを象徴するカンガルーやコアラは分類学的には有袋類と称されるグループに含められるが,有袋類とは育児囊をもつ動物という意味である。われわれヒトをも含めた真獣類(有胎盤類)では,受精卵はある程度発生を進めた胚盤胞の段階で母親の子宮に着床する。…
※「コアラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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