樹高45~55m,直径1.2~2mになるフトモモ科の常緑高木で,オーストラリアの南東端部とタスマニア島に分布する。生長が早いので世界各地で造林用に用いられ,また公園などにも植えられる。日本には明治初めに入った。樹皮は灰色で,薄片状に細長くはげ,青灰色のはげ跡が残る。葉は著しい異型性を示し,若木では長さ約10cmの卵形,無柄で対生し,成木では長さ約20cmの披針形,全縁で,やや鎌形に曲がり,柄があり互生する。花は両性花で,葉腋(ようえき)に1(~3)個生じ,つぼみは径約2cmの倒円錐形で,上部を合着した萼片と花弁のふたがおおう。開花時にこのふたは脱落し,多数の白色のおしべと中央に棒状のめしべを現す。花とほぼ同形の蒴果(さくか)は多数の小さい種子を含む。材は心材淡黄褐色,気乾比重0.75~1.0で,建築,枕木,電柱,器具,パルプなど用途が広い。葉からユーカリ油をとり,薬用,駆虫剤,香料に用いる。
ユーカリ属Eucalyptusは400~500種の樹木からなり,そのほとんどがオーストラリアおよびタスマニア島に分布する。わずか数種がニューギニアにもあり,そのうち1種E.deglupta Bl.(この種のみオーストラリアには分布しない)は樹高70mに達する高木で,さらにニューブリテン,ティモール,セレベス,ミンダナオにまで分布する。オーストラリアには広くユーカリ類の林がみられるが,これは主として雨量と気温の関係で次の3型に分けられる。(1)湿潤ユーカリ林 南東部および南西端部の年雨量750~1000mmの地域に発達し,密生した高木のユーカリ林を形成する。樹高が数10mになる種類も少なくなく,中でもセイタカユーカリE.regnans F.Muell.は樹高97m,直径7.5mのものが記録され,広葉樹としては世界最高の樹高である。(2)乾燥ユーカリ林 年雨量が500~750mm(南部)または750~1500mm(北部)の地域に成立し,高木のユーカリ類を主体とする疎林を形成する。(3)マリMallee 南部の年雨量250~500mmの範囲に成立し,低木のユーカリ類がやや散生的に生育する叢林(そうりん)を形成する。
ユーカリ属はオーストラリアという隔離された地域内で多数の種に分化しているが,属としてはきわめてよくまとまり,次のような共通した特徴をもつ。葉は幼木では幅が広く,またしばしば無柄で対生するが,成木では細長くなることが多く,有柄で互生する。表裏とも青灰色を示し,精油分を含むためすかしてみると油点が散在し,もむと芳香がする。とくにペパーミントPeppermintと呼ばれるグループには精油が多い。花のつぼみは萼筒が倒円錐形か鐘形で,萼片と花弁の合着したふたがあり,開花時にふたは落ちる。おしべ多数。果実は蒴果で多数の小さい種子がある。樹幹上にキノkinoと呼ばれる赤褐色の樹脂状物質を出すことが多く,そのためこの属の樹木をgumまたはgum-treeと総称することがある。ユーカリ類はオーストラリアの主要な林木であるので,その材は建築用からパルプ,燃料用にいたる木材のほとんどあらゆる用途に利用されている。樹種により材質も軽軟~重硬,淡色~濃色と多様だが,気乾比重0.65~1.10程度の重さ中庸~重硬のものが多い。木材のほかに種類によっては葉からユーカリ油,樹皮からタンニン,樹液からキノ(医薬)が得られ,最近,石油植物としても注目されている。熱帯性のものから温帯性のものまで含むので生長の早い種類は世界各地で造林用に用いられるが,湿潤な日本ではあまり成功していない。
コアラがユーカリを食べる動物として有名だが,特定の種の葉しか食べない。これがなぜかはまだわかっていない。
執筆者:緒方 健
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…オーストラリア固有の樹上生有袋類。ユーカリ類の一部の木の葉しか食べない特異な食性をもつことで知られている。コモリグマ,あるいはフクログマともいう。…
…光合成の研究で1961年にノーベル化学賞を受賞したアメリカの化学者メルビン・カルビンは〈石油枯渇時代に備え,植物を仲介して太陽エネルギーを利用する技術を蓄積しよう〉と提唱し,76年9月に開かれたアメリカ化学会では〈石油のなる木(ホルトソウ,アオサンゴ)を発見した〉と発表している。 その後78年末からの第2次石油ショックを契機に,世界各国でバイオマス利用に関する研究が盛んに行われ,日本でもコアラの食樹として知られるユーカリの葉から採った油が,ガソリンの代替物として自動車の燃料となることが立証された(1979‐80)。 酒造りと同じ発酵法で,サトウキビやキャッサバからアルコールを得,ガソリンに混合するガソホールgasohol(ガスホール,ガスコール,ガソールともいう)の研究も盛んで,ブラジルやアメリカではすでに一部実用化されており,アルコールだけで走る自動車もある。…
※「ユーカリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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