日本大百科全書(ニッポニカ) 「コガネアジ」の意味・わかりやすい解説
コガネアジ
こがねあじ / 黄金鰺
orangespotted trevally
[学] Flavocaranx bajad
硬骨魚綱スズキ目アジ科アジ亜科に属する海水魚。和歌山県串本(くしもと)町付近、南西諸島、フィリピン諸島、タイランド湾、インドネシア諸島、紅海、ペルシア湾など東インド洋から西太平洋にかけて分布する。体は楕円(だえん)形で、側扁(そくへん)する。体の前部背縁は緩く湾曲する。吻端(ふんたん)は鈍く、吻長は眼径より著しく長い。脂瞼(しけん)(目の周囲や表面を覆っている透明の膜)はほとんど発達しない。上顎(じょうがく)の後端は目の前縁下方に達する。上下両顎には絨毛(じゅうもう)状の歯帯があり、前端で幅が広い。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)に三角形状の歯帯があるが、後方へ伸びない。鰓耙(さいは)は上枝に7~9本、下枝に18~21本。背びれは2基で、第1背びれは8棘(きょく)、第2背びれは1棘24~26軟条。臀(しり)びれは1棘21~24軟条で、前方に2本の遊離棘がある。第2背びれと臀びれの前部の軟条は伸びるが、頭長より短い。側線は緩く湾曲し、第2背びれの第11~15軟条下に達した後、体側の中央を後方に向かって直走する。直走部の長さは湾曲部より著しく短く、湾曲部のおよそ70~75%。胸部は鱗(うろこ)で覆われるが、腹中線上に狭くて小さい無鱗(むりん)域がある。体色は幼魚では背側面は青銀色で、腹側面は銀白色。成長すると黄色~黄金色になる。体側面に多数の橙黄(とうこう)色の斑点(はんてん)が散らばる。鰓孔の上端には黒斑がない。各ひれはいくぶん黄色。体色は瞬時に全身を黄色に変えることができる。幼魚は内湾や沿岸域で単独でいるが、成魚はサンゴ礁や岩礁の縁辺で、水深2~50メートルの沿岸域に群れですみ、おもに魚類、甲殻類などを食べる。ペルシア湾では産卵期は6~9月であると考えられているが、それ以外の海域では不明である。最大全長は55センチメートルほどになる。日本では刺網(さしあみ)、釣り、銛(もり)などでとれることがあるが、きわめて少ない。
本種は、以前はヨロイアジ属Carangoidesに入れられていたが、魚類研究者の木村清志(せいし)(1953― )らが、2022年(令和4)のDNAの分析と形態の観察によって、本種のみに対してFlavocaranxを新設し、同年、それにコガネアジ属の新和名を提唱した。
[尼岡邦夫 2024年4月17日]