改訂新版 世界大百科事典 の解説
コンピューターアーキテクチャー
computer architecture
アーキテクチャーとは,本来は建物の作り方すなわち建築術を指すが,この場合は,コンピューターを建物になぞらえて,その構成法を指す。コンピューターを設計する場合,どんな回路素子を使い,動作速度をどのくらいにするかというハードウェアの面の考慮も重要であるが,アーキテクチャーという言葉で表されるのは,そうしたハードウェアの面ではなく,ソフトウェアあるいはプログラマーからみたコンピューターの構造である。コンピューターのアーキテクチャーは,その細かさの程度に応じて,いろいろなレベルで考えられるが,もっともおおまかなレベルでみると,演算制御装置,主記憶装置,補助記憶装置,入力装置,出力装置からなる。このうちアーキテクチャー上もっとも重要なのは演算制御装置である。これの構成を決めるに当たっては,命令体系をどう決めるか,すなわち人間がコンピューターに対して与える指示としてどんな形のものをどのくらい用意するか,一度に扱えるデータの種類をいくつにして,それぞれの長さ(桁数)をどのくらいにするか,加減乗除などの計算をどんな方式でやるか,記憶容量をどこまで大きくできるようにするか,記憶装置や入出力装置など外部とのデータのやりとりをどうするかなどを考えなければならない。他の装置についても細かな仕様をよく考えて決める必要があるが,それらをひっくるめたものがコンピューターアーキテクチャーである。初期のコンピューターでは,そのアーキテクチャーは設計者が自由に決めてよかったが,現代では,コンピューターを動かすのに不可欠で,しかも開発に手間のかかるソフトウェアの蓄積が進んだ結果,まったく白紙からの自由な設計はしにくくなっている。つまり,いままで使われてきたソフトウェアを生かす,すなわち在来機との互換性を保ちながら,新しいハードウェア技術の進歩を反映するアーキテクチャーを考えることが重要なのである。
執筆者:石田 晴久
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報