改訂新版 世界大百科事典 「コーイング」の意味・わかりやすい解説
コーイング
Helmut Coing
生没年:1912-
ドイツの代表的法学者。1935年ゲッティンゲン大学で学位を得,クンケルWolf-gang Kunkelの助手として古代法を専攻したが,翌年フランクフルト・アム・マイン大学でゲンツマーErich Genzmerの助手となり,中世ローマ法の研究に従事。《フランクフルト・アム・マインにおけるローマ法の継受》(1939)を発表した。40年フランクフルト大学法学部の助教授,48年から80年まで正教授をつとめた。ローマ法およびローマ法継受史研究から出発してヨーロッパ近世法史学(とくに私法史)の発達に指導的役割を果たし,マックス・プランク・ヨーロッパ法史研究所の初代所長(1964-80)として全ヨーロッパ的規模の共同研究を組織した。また,法哲学者として第2次大戦後の自然法論の再興を担った一人であり,私法解釈学の領域(なかでも民法総則や信託法,相続法の分野)に確固たる地歩を占め,外国法・比較法学(おもに経済法)やEC法の領域でも少なからぬ寄与をなしている。こうした多彩な学問活動を支えているのは,中世から現代にいたるヨーロッパにおける共通の法文化の追究という観点である。
執筆者:佐々木 有司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報