改訂新版 世界大百科事典 「ゴルディオン」の意味・わかりやすい解説
ゴルディオン
Gordion
古代フリュギアの首都。ラテン名はゴルディウムGordium。遺跡の現代名はヤッシ・ヒュユクYassi Höyük。トルコのアンカラの南西約80km,サカリア(サンガリウス)川の右岸にある500m×350mのテル。1950年から数年間ペンシルベニア大学のヤングR.S.Youngが発掘して,前8~前7世紀のフリュギアに関する知識は一挙に増大した。テルは5層に大別され,発掘によって前3千年紀末の青銅器時代に居住が始まったこと,ヒッタイト新王国時代および初期フリュギア時代層,およびその上のフリュギア時代層が明らかにされた。この焼失都市の上にペルシア時代の厚い層があり,小村落のヘレニズム時代とガラテヤ時代層がのっている。前333年,アレクサンドロス大王は東征の途中ここで〈ゴルディオスの結び目Gordian knot〉を一刀のもとに両断し,その東方征服は効果的に進められたという。この町の神殿には古い荷車が奉納されており,轅(ながえ)が結び目のわからないように杭に縛られていて,それを解きうる者はアジアの王たるべしとの予言が伝えられていたからである。
フリュギア都市は強固な石壁をもち,宮殿は小アジアの建築として伝統的なメガロンであって,その一つの床からは色石を使った幾何学文の,最古のモザイクが発見された。テルの近くには盛土をした多数の古墳があって,径300m,高さ53mの最大の円墳からミダス王と推測される60歳くらいの人骨が出土した。出土品にはヒッタイトから継承した小アジアに伝統的なものと,アッシリアやギリシアの製品およびそれらの模倣品が多く含まれていて,当時の東西交流のようすを知ることができる。テルの北では幅6mの古道(ペルシア時代の〈王の道〉)が発掘され,ゴルディオンが交通の要所に位置していたことを示す。
執筆者:小野山 節
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報