ゴルトシュタイン(読み)ごるとしゅたいん(英語表記)Kurt Goldstein

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴルトシュタイン」の意味・わかりやすい解説

ゴルトシュタイン(Eugen Goldstein)
ごるとしゅたいん
Eugen Goldstein
(1850―1930)

ドイツの物理学者。ギムナジウム終了後ブレスラウ大学で学び、ついでベルリン大学ヘルムホルツのもとで学位を取得(1881)。1888年ベルリン大学付属天文台員を経て、王立科学アカデミーのポツダムの天体物理学部長となり、死去するまで在職した。

 真空放電現象に興味をもち、1871年ごろから、陰極からの放射線に関する実験を行い、この線が陰極板に垂直に放出されること、その性質は陰極物質によらないこと、この線は化学反応をおこすことができることなどを確かめ、1876年これを陰極線と名づけた。1886年には陰極にあけた小孔を通過する放射線(カナル線陽極線)を発見した。これはのちにペランによって、気体中の正イオンであることが確認された(1895)。ミクロな物質の運動現象の開拓的研究者の一人である。

[高橋智子]


ゴルトシュタイン(Kurt Goldstein)
ごるとしゅたいん
Kurt Goldstein
(1878―1965)

ドイツおよびアメリカで活動した神経学者。シュレージエン(現、ポーランド領)の生まれ。ハイデルベルク大学哲学文学を学んだのち、ブレスラウ大学で医学を学ぶ。ゲシュタルト心理学者と親しく、脳機能の局在を否定して全体説を主張した。脳損傷者を研究対象として、脳の損傷部位と知覚欠陥、運動の欠陥、トーヌス(筋(きん)緊張)、言語などの関係を研究したものが多いが、また脳傷害者の適応の問題を取り上げ、脳傷害者を診断するテストの作製にも貢献した。1933年にはユダヤ人としてナチスに追放されアメリカに渡った。

[宇津木保]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゴルトシュタイン」の意味・わかりやすい解説

ゴルトシュタイン
Goldstein, Eugen

[生]1850.9.5. グライビッツ
[没]1930.12.25. ベルリン
ドイツの物理学者。カルルスルーエ,ベルリン両大学で学ぶ。ベルリン大学では H.ヘルムホルツに師事ポツダム天文台の物理学教授。真空管内の放電現象を研究。放電管内に物体を挿入すると陽極に鋭い影ができることから,陰極から放射線が出ていることを示した。 1880年陰極線を磁場によって曲げる実験を行い,陰極線が負に帯電した粒子の流れであるという考えの証拠を提示したが,彼自身はこの粒子がドップラー効果を示さないなどの理由によりこの説には懐疑的であった。さらに 86年陽極から発する放射線の存在を発見し,これをカナル線と名づけた。

ゴルトシュタイン
Goldstein, Kurt

[生]1878.11.6. シュレジエン,カトウィーツェ
[没]1965.9.19. ニューヨーク
ドイツ,アメリカの神経学者,精神医学者。ケーニヒスベルク,フランクフルト,ベルリン大学教授を歴任,ナチス政権に追われ,渡米 (1935) 。コロンビア,タフト大学教授を歴任後,開業。神経学,精神病理学から心理学に近づき,比較的ゲシュタルト理論に近い生物学的,生体的全体観に立脚。実証的研究としては脳損傷部位と知覚および運動機能の欠陥との関係,さらに失語症の問題に及んでいる。主著『生体の機能』 Der Aufbau des Organismus (1934) ,『人間-その精神病理学的考察』 Human Nature in the Light of Psychopathology (46) 。

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