日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴンド」の意味・わかりやすい解説
ゴンド
ごんど
Gond
インド中央部、マディヤ・プラデシュ州、マハラシュトラ州東部、アンドラ・プラデシュ州北部およびその隣接諸州に住む人々。インドのドラビダ系民族集団のなかで最大の人口をもつ。しかし、文化・社会はかならずしも一様ではない。言語も、半数以上はドラビダ系のゴンディ語を話すが、他はヒンディー語、テルグ語などを用いる。15世紀以降いくつもの土侯国を形成し、ヒンドゥー諸王やイスラム諸王朝と争った。
生業は農業だが、高原の乾燥地であるにもかかわらず灌漑(かんがい)は行わず、移動焼畑農法を行う。斧(おの)、掘捧など簡単な道具を用いて、トウモロコシ、小麦、豆類、雑穀を栽培する。現在では焼畑は減り、道具も大半は鋤(すき)を使うが、ゴンドの一集団ムリア・ゴンドはいまも移動焼畑を行っている。村落を形成し、村長と祭司がいるが、周期的に居住地をかえ、また個人が村への帰属を自由に変更できるため、村落の構成が流動的で、不安定である。ムリア・ゴンドには男女の若者組があり、女性は結婚前にかならずいれずみをする。ゴンド人は結婚に際して、夫は妻方に多くの婚資、あるいは労働奉仕を与えなければならないので、しばしば略奪婚(実際には駆け落ち)が行われる。一夫多妻が認められている。出自は父系。父系氏族は社会組織の面だけでなく、宗教的にも重要で、氏族神への信仰が彼らの宗教の中心である。
[板橋作美]