ゴールディング(読み)ごーるでぃんぐ(英語表記)William Golding

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴールディング」の意味・わかりやすい解説

ゴールディング
ごーるでぃんぐ
William Golding
(1911―1993)

イギリスの小説家。コーンウォール生まれ。オックスフォード大学卒業後、劇場に関係していたが、1939年以後はイングランド南部の中学校の教師を勤め、第二次世界大戦中は海軍で活躍。戦後ふたたび教職に戻ってから書いた小説『蠅(はえ)の王』(1954)で一躍有名になった。「怒れる若者たち(アングリー・ヤングメン)」と同時にデビューしながら、この処女作や、ネアンデルタール人対ホモ・サピエンスという主題の第二作『後継者たち』(1955)に発揮された彼の神話的想像力は独自のものだった。『ピンチャー・マーティン』(1956)、『自由な転落』(1959)、『尖塔(せんとう)』(1964)、『ピラミッド』(1967)から『通過儀礼』(1980)に至るまで、透徹した方法性とイギリス的倫理性を結合しつつ、重厚な小説世界を実現している。1983年ノーベル文学賞受賞。

高橋康也

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゴールディング」の意味・わかりやすい解説

ゴールディング
Golding, William (Gerald)

[生]1911.9.19. コーンウォール,ニューキー近郊
[没]1993.6.19. コーンウォール,ファルマス
イギリスの小説家。神話的,寓意的手法を用いて,人間の条件を問う作品で知られる。オックスフォード大学卒業後,教職につき,1940年海軍に入る。処女作『蠅の王』 Lord of the Fries (1954) は,バランタインの少年冒険小説『サンゴ島』 (1858) をパロディー化し,孤島に投出された少年たちの物語に仮託して,核時代の極限状況を探究したもので,第2次世界大戦後の最も重要な小説の一つとされる。以後,ネアンデルタール人の目を通して人類をみた『後継者たち』 The Inheritors (1955) ,『ピンチャー・マーティン』 Pincher Martin (56) ,『自由な転落』 Free Fall (59) ,『尖塔』 The Spire (64) ,『ピラミッド』 The Pyramid (67) ,『通過儀礼』 Rites of Passage (80) などの問題作を出した。ほかに,戯曲真鍮の蝶』 The Brass Butterfly (1958) がある。 83年ノーベル文学賞を受賞した。

ゴールディング
Golding, Arthur

[生]1536頃
[没]1605頃
イギリスの翻訳家。 P.シドニー友人オウィディウスの『変形譚』 (1565~67) ,カエサルの『ガリア戦記』 (65) などラテン語からの翻訳のほか,フランス語からの翻訳もある。オウィディウスの訳はシェークスピアによって利用された。

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