日本大百科全書(ニッポニカ) 「サジュウ」の意味・わかりやすい解説
サジュウ
さじゅう
saj‘
アラビア語で押韻散文の意。アラブ詩の原形とみる説がある。定型化した一般のアラブ詩が脚韻と韻律をもっているのに対して、韻律をもたず、脚韻だけからできている。ジャーヒリーヤ時代のカーヒン(巫女(みこ)のこと)が神の託宣を伝えたり、その他の宗教的な説教や演説をしたりするのに用いられた。ムハンマド(マホメット)も啓示を、サジュウを多く用いて伝え、これがコーランの文体の特徴をなしている。そのため彼は、カーヒンとか詩人の同類にみなされたが、「迷う者は詩人に従う。汝(なんじ)は、彼らがあらゆる谷間をさまよい歩く様子を見なかったか、自分では実行もしないことを口にするのを。」(コーラン26―224以下)との啓示を得て、彼らとは一線を引いている。9世紀中葉以降、サジュウはカリフの説教などに用いられ始め、マカーマ文学で頂点に達した。以後今日まで散文修辞法の主要なものの一つとなった。
[池田 修]