日本大百科全書(ニッポニカ) 「サトウモロコシ」の意味・わかりやすい解説
サトウモロコシ
さとうもろこし / 砂糖蜀黍
[学] Sorghum bicolor Moench var. saccharatum Koern.
イネ科(APG分類:イネ科)の一年草。モロコシの変種で、茎の汁液に甘味があるのでこの名がある。ロゾク(蘆粟)、スイートソルガム、ソルゴーなどともいう。東アフリカ原産で、世界各地の温帯や熱帯で栽培されている。トウモロコシに似た植物で、茎は直立し高さ2~4メートル、太さ4センチメートルほどになり、数本の分げつを出す。茎の基部2~3節より空中に支持根を出し、これが土に入って倒伏を防いでいる。葉は1本の茎に十数枚から二十数枚つき、大きいもので長さ1メートル、幅10センチメートルに達する。夏から秋に茎頂に長さ15~20センチメートルの花穂を出す。花穂は総状花序で、2000~3000個の小花をつける。なお花穂の形は品種によって円柱状からほうき状のものまでさまざまである。穎果(えいか)は褐色、黄、白、紅色などで、楕円(だえん)形で先はややとがり、長径5ミリメートルとごく小さく、1000粒の重さは23~28グラムである。
栽培と利用
サトウモロコシはモロコシに付随して世界中に伝播(でんぱ)したと考えられる。高温、乾燥に強く、よく成長し、かなりの湿潤条件にも耐えるので、栽培適地が広い。生育日数は100日ほどなので、日本でも沖縄から北海道まで栽培が可能である。日本には5~8世紀に伝来したと考えられる。明治初期に、国産の甘味原料として大規模な栽培が計画され、製糖工場も建設された。しかし、汁液にショ糖のほかにブドウ糖や果糖を多く含み、結晶しにくく、そのうえ1887年(明治20)以降に台湾などでサトウキビを原料とする製糖業がおこったため、経済的に不利なサトウモロコシ糖業は廃止された。
ところが最近、石油代替のエネルギーを植物から得る研究が進められ、その原料作物として注目され始めている。これは、サトウモロコシの絞り汁を発酵させてアルコールをつくり燃料に利用しようというものである。また、絞りかす(バガスという)を飼料や燃料として利用する方法も開発されつつある。さらに、液糖としての利用も再検討される気運にある。一般には飼料用とし、茎葉を細かく切断してサイロに詰めて良質のサイレージをつくり、種実は飼料や醸造酒原料とする。
[星川清親 2019年8月20日]