サヤミドロ(その他表記)Oedogonium

改訂新版 世界大百科事典 「サヤミドロ」の意味・わかりやすい解説

サヤミドロ
Oedogonium

水田,池,湖沼,湿原などの水草棒杭などに生育する単列糸状の微細な緑藻の1属で,全世界で約400種,日本では約65種が知られる。有性生殖は卵と精子,無性生殖は遊走子により行われるが,遊泳性の精子と遊走子がともに先端に王冠状に配列する多数の鞭毛をもつこと,および他の緑藻には見られない独特の様式の体細胞分裂を行うことの特徴により,サヤミドロ目Oedogonialesが創設されている。この目にはサヤミドロ科の1科が含まれ,それには,分枝のない糸状体のサヤミドロ属のほかに,分枝する糸状体の先端細胞刺毛をもつブルボケーテ属Bulbochaeteと先端細胞に刺毛のないエドクラディウム属Oedocladiumの2属が所属する。日本では,ブルボケーテ属は約10種知られるが,エドクラディウム属は1種知られるに過ぎない。前者は淡水中に多いが,後者はおもに湿った土上に生育する。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サヤミドロ」の意味・わかりやすい解説

サヤミドロ(鞘水泥)
サヤミドロ
Oedogonium

緑藻類サヤミドロ目サヤミドロ科の淡水藻。池水,水田の水たまりなどに発生する糸状の藻類である。色は褐色がかった緑色円筒形の細胞の一端に近く細胞壁に鞘状の皺がみられるので,この名がある。この皺は細胞分裂時,細胞膜が切れその下に新しい細胞膜が伸び出るため,古い細胞膜が鞘状に残ってできたものである。サヤミドロの有性生殖にはいろいろの型があるが,卵と運動性の精子をもつ卵子接合である。種によって雄性細胞がいったん,矮精体という小さな器官を形成し,それからあらためて精子が出て卵子に到達する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「サヤミドロ」の意味・わかりやすい解説

サヤミドロ
さやみどろ
[学] Oedogonium

緑藻類の1属の総称で、約400種を含む大属。体は円筒形の細長い細胞が一列に並んだ糸状体よりなるが、細胞分裂の名残(なごり)である鞘(さや)を細胞どうしのつなぎ目近くにもつので、藻塊を手にとるとひっかかる感じがあり、ぬめりがないのでそれとわかる。和名は、このような鞘があることによってつけられた。藻塊は鮮緑よりは暗色または黄色みを帯びる場合が多い。至る所の止水中に出現する淡水藻である。

[小林 弘]

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