貴族ないし富裕な市民の邸宅における社交サロンで演奏される音楽。音楽家が教会や宮廷の庇護(ひご)から離れて活動するようになった19世紀に、とくに栄えた。サロンには文芸家たちと並んで音楽界の才能が招かれ、自作の発表や演奏を行ったが、作品はサロンの空間的制約などのため、ほとんどが独唱・重唱の歌曲、独奏曲、室内楽に限られ、小品が大半を占めた。おもに軽い内容の迎合的スタイルをとり、優美で感傷的な旋律を用いたわかりやすい作品が目ざされ、人気オペラのアリアなど、既存の有名旋律を利用した接続曲(ポプリpotpourri〔フランス語〕)や変奏曲も多くつくられた。
サロン音楽は、一般的には、サロンにおける社交の装飾的存在であったが、サロンが公開の音楽会と並ぶ重要な活動の場であった19世紀には、ショパン、グノーなどの多くの有名な音楽家が、サロンのための作品を残している。
なお、今日この名称は、サロンで味わうような、上品で小ぎれいな軽音楽の意味で使われることが多い。
[美山良夫]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…ショパンの《ノクターン》などもこれに数えられるが,このような曲になると純粋器楽との境は流動的になる。19世紀半ばの少し前からヨーロッパで流行した〈サロン音楽〉も,優雅で抒情的なピアノ独奏あるいは小編成の小品という点でキャラクター・ピースに隣接するが,これの典型の一つであるT.ボンダジェフスカ(バダジェフスカ)の《乙女の祈り》のように,より通俗的であるという違いがある。 標題音楽については,従来主として,文学的・絵画的なものを音楽が表せるかという観点から論じられてきた。…
※「サロン音楽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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