精選版 日本国語大辞典 「室内楽」の意味・読み・例文・類語
しつない‐がく【室内楽】
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西洋の器楽合奏において、各パートに1人の独奏者を配する楽器編成法をとくに重奏(アンサンブル)といい、重奏による器楽合奏曲を総称して室内楽という。楽器の数により二重奏から九重奏に区分され、用いる楽器の種類や組合せによってさまざまな形態が可能だが、歴史的に形成された定型は十数種ほどである。もっとも重要な定型は、二つのバイオリンにビオラとチェロからなる弦楽四重奏である。
他の定型の場合にも弦楽器が主体となっており、弦楽四重奏の楽器数を増減したり(弦楽三重奏、弦楽五重奏)、それに別種の楽器を一つ加えたものが多い。後者の場合、ピアノと弦楽器の組合せはピアノ三重奏、ピアノ四重奏、ピアノ五重奏、管楽器と弦楽器の組合せはフルート四重奏、クラリネット五重奏などとよばれる。また、バイオリンとピアノの二重奏は単にバイオリン・ソナタとよばれる。管楽器のみによる定型にはフルート、オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットによる木管五重奏がある。六重奏以上になると定型といったものはなく、任意の楽器の組合せがなされる。形式的にみると、さまざまな形態を通じて厳格な4楽章ソナタの形式が主流をなしており、室内楽を重奏のためのソナタということができる。
[大久保一]
室内楽がこうした特徴を備えるのは古典派以後のことであるが、少数楽器の合奏は世俗音楽の台頭した中世末期以来広く行われ、バロック時代には音楽の主要な一分野にまで成長していた。ただし、室内楽ということば自体は古典派以降とはやや異なる意味をもっていた。室内楽の原語「ムジカ・ダ・カメラ」は、16世紀中ごろのイタリアで教会音楽に対する世俗音楽の意味で用いられ始めた。カメラとは王侯貴族の宮廷内の部屋を意味する。バロック時代に入り、教会・劇場と並んでカメラが音楽発展の主要な舞台になると、そこでの音楽全般が室内楽とよばれるようになった。このように当時の室内楽の概念は、文字どおり室内という奏楽の場によって規定されており、独奏や声楽、さらに管弦楽をも含む幅広いものであった。室内楽の概念が編成面からとらえられるようになったのは、音楽生活の中心が貴族のカメラから市民的な公開演奏会に移った18世紀末のことである。バロック時代における狭義の室内楽の代表的形態としては、二つのバイオリンと通奏低音からなるトリオ・ソナタがあげられる。
古典派時代に入ると、通奏低音の消滅に伴いトリオ・ソナタは廃れ、セレナードやディベルティメントなどの娯楽音楽を出発点に新しい室内楽が形成された。初期には管弦楽との編成上の区別はあいまいであったが、交響曲が管弦楽のためのソナタとして発展するのと並行して、重奏のためのソナタという近代室内楽の特質が確立された。もっとも大きな役割を果たしたのは70余の弦楽四重奏を作曲したハイドンで、各楽器の対等な関係に基づく対話風の書法は他の形態においても理想とされた。モーツァルトはハイドンに学ぶとともにピアノや管楽器を含む多彩な形態を試み、ベートーベンの作品は構成の厳格さと深い精神性の表現において古今の室内楽の頂点を形づくっている。表現手段の拡大を求めたロマン派時代には、音色・音量の限られた室内楽は以前ほどの重要性を失い、この分野をまったく手がけない作曲家も多かったが、シューベルト、メンデルスゾーン、シューマン、ブラームス、ドボルザーク、フランクなど古典派の流れをくむ作曲家により、古典的構成とロマン的情感の調和した作品が書かれた。
20世紀に入ると、新古典主義の潮流のもとで室内楽はふたたび重要性を増し、シェーンベルク、バルトーク、ストラビンスキーら多くの作曲家が作品を書いている。新たな特徴としては、伝統的な形態や形式を離れた自由な室内楽的表現の探究があげられる。
[大久保一]
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…合奏には,1声部1楽器で奏する重奏と,各声部に複数の楽器をあてるものとに大別される。重奏の典型は室内楽で,声部数によって二重奏,三重奏(トリオtrio),四重奏(クアルテットquartetto)などと呼ばれるし,使用楽器によってピアノ三重奏,弦楽四重奏,管楽八重奏などとも称される。また,ジャズ・バンド,ハワイアン・バンドといった形態もあるし,中世日本の能の囃子(はやし)や近世邦楽における箏,三味線,尺八による三曲合奏も基本的には重奏形態である。…
※「室内楽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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