変奏曲(読み)へんそうきょく(英語表記)variation

  • Variationenドイツ語
  • variation英語
  • 変奏曲 variation

翻訳|variation

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

楽曲の形式。一定の主題とそのいくつかの変から成る楽曲をいう。変奏の要素には,旋律変形装飾リズムや速度の変化,和声の変化,対位法の技法などがあり,また変奏の単位ごとに区切りをもつ分節的な変奏と,シャコンヌパッサカリアのようにオスティナート主題に基づく連続的な変奏がある。変奏の技法による芸術的な楽曲は,16~17世紀のイギリスのバージナル楽派から現れ,バロック時代にはコラール俗謡の旋律による装飾的な変奏曲が栄えた。ベートーベン以降は,主題の輪郭のみを保持した性格変奏が多く,現代音楽ではセリーの技法による変奏曲がみられる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディアの解説

主題モティーフ動機)に含まれる素材を変形する技法を変奏といい,それが楽曲構成の基盤になっているものを変奏曲とよぶ。その作曲技法には旋律的変奏(主題と同じ和音進行),和声的変奏,リズム的変奏,テンポ上の変奏,対位法的変奏などがある。J.S.バッハの《ゴルトベルク変奏曲》,ベートーベンの《ディアベリ変奏曲》などの鍵盤(けんばん)楽器用の作品が古典派以前の西洋音楽で数多く生まれた。ロマン派以後はブラームスの《ハイドンの主題による変奏曲》やチャイコフスキーの《ロココ風の主題による変奏曲》,ラフマニノフの《パガニーニの主題による狂詩曲》など,大規模な管弦楽曲や協奏曲形式の作品も多数生まれている。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典 第2版の解説

主題モティーフあるいはそれらに含まれる音楽素材を種々の手法で変形する技法を変奏といい,変奏技法が楽曲構成の基盤となっている曲を変奏曲,その楽式を変奏曲形式という。変奏は作曲における基本原理の一つで,古来あらゆる種類の音楽にみられる。例えば中世の単旋律聖歌にもすでに旋律の高度な装飾変奏が認められる。変奏の対象は,音列,音型,和声,リズム,拍子,テンポ,強弱法,音色(管弦楽法など),伴奏部,旋律全体から形式構造そのものに至るまで,音楽のほとんどすべての要素に及び,しばしばそれらが複合的に組み合わされる。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

大辞林 第三版の解説

主題のリズム・旋律・和音などを種々の方法で変化させて、全体を一つの楽曲にまとめたもの。バリエーション。

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

主題、動機、音列などを種々の方法で変形する技法を変奏といい、変奏技法を楽曲構成の基本原理とする楽曲を変奏曲という。一般に「主題と変奏theme and variations」という名称でよばれることが多いが、主題呈示部のない変奏曲も存在する。変奏の原理は主題などの変形を重ねていく原理であると同時に反復の原理でもある。つまり、自己同一性と変形という相反する二つの性質により成立する統一の原理であるといえよう。その技法には大別して次の3種がある。〔1〕装飾変奏(厳格変奏) 主題の旋律やリズムなどに装飾的変化を加える。〔2〕対位法的変奏 音の横の連なりを重視する対位法による変奏技法を総称するが、とくに既存の旋律を定旋律とする変奏曲が重要である。〔3〕性格変奏(自由変奏) 主題の部分的特徴のみを保持し、自由な変奏を行う。このほか、主題の変形方法に着眼してフランスの作曲家ダンディが行った、〔1〕装飾的変奏、〔2〕修飾的変奏、〔3〕拡張(敷衍(ふえん))的変奏の3分類法もある。
 変奏の原理を用いた楽曲は古くから世界各地に存在するが、変奏曲という独立した形式をもつものが登場するのは16世紀である。スペイン、イタリア、イギリスなどのリュート、ビウエラ、鍵盤(けんばん)楽器のための作品のなかにその例がみいだされる。とりわけスペインでは、カベソンのオルガン曲集やナルバエスのビウエラ曲集のなかにまとまった形でみられる。ディフェレンシアスとよばれる楽曲がそれで、変奏曲としてはもっとも古いものの一つである。ここで用いられた変奏技法は、装飾的対位法的なものであった。この技法は、スウェーリンク、シャイト、バード、ギボンズらに受け継がれ、イタリア、イギリスなどで用いられた。17世紀に入ると、フレスコバルディのパルティータなど変奏曲は多数つくられ、また性格変奏の技法も用いられるようになる。バロック期には、組曲内のドゥーブルやコラールパルティータに変奏技法が用いられ、一方、シャコンヌ、パッサカリア、フォリアなどのオスティナートをもつ変奏曲も登場する。古典派では、モーツァルトにみられるように比較的単純化された装飾変奏の作品もつくられるが、ベートーベンに至り内容は豊かになり、彼によって性格変奏が確立された。そしてこの傾向はシューマンやリストらロマン派へ受け継がれた。現代音楽における音列作法も、ある意味において変奏の原理に立脚したものといえよう。[アルバレス・ホセ]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 楽曲の一つの主題をもとに、そこに含まれる要素をさまざまに変化させて構成した楽曲の形式。バリエーション。
※百鬼園随筆(1933)〈内田百〉百鬼園先生幻想録「越天楽変奏曲の作曲者宮城道雄氏は」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

今日のキーワード

児童相談所

子供の福祉に関する相談に応じ,援助などを行なう行政機関。児相と略称される。児童福祉法に基づき,都道府県と政令指定都市に設置が義務づけられている。運営は厚生労働省の局長通知,児童相談所運営指針にそって行...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android

変奏曲の関連情報