1997年に登録された世界遺産(文化遺産)。サンティアゴ・デ・クーバは、キューバ東部のサンティアゴ・デ・クーバ湾に面した人口約40万人の港町である。この町はディエゴ・ベラスケス・デ・クエリャル(キューバ征服を指揮し初代キューバ総督に就任したスペイン人)によって建設され、1515年から1607年まではキューバの首都だった。この町にあるサン・ペドロ・デ・ラ・ロカ城(サン・ペドロ・デ・ラ・ロカ要塞)は、ヨーロッパの列強諸国がカリブ海の覇権を競った16世紀末、キューバの戦略的な重要拠点であるサンティアゴ港を防衛するため、スペインの国王フェリペ2世の命令で建設された。この要塞には砦、弾薬庫、砲台などが複雑に配置され、イタリア人技術者ファン・バウティスタ・アントネッリの設計によるイタリア・ルネサンス様式の遺構が残されている。サンティアゴ・デ・クーバはその後、16~17世紀には海賊による密貿易の拠点となり、18世紀末にはハイチ独立により、この地に移り住んだフランス人たちがサトウキビの栽培を手がけた。こうした経緯から、スペインとフランスの建築様式が混在する町並みを形成することになった。また、この町は1898年、米西戦争が起こった舞台となり、1953年にはフィデル・カストロ率いる160名の兵士が陸軍の兵営を攻撃しキューバ革命が始まるきっかけになった歴史も持っている。現在はマンガン鉱や銅鉱などの鉱物や砂糖、タバコの積み出し港としてにぎわっている。◇英名はSan Pedro de la Roca Castle, Santiago de Cuba