日本大百科全書(ニッポニカ) 「サーニン」の意味・わかりやすい解説
サーニン
さーにん
Санин/Sanin
ロシアの作家アルツィバーシェフの長編小説。1907年刊。発表されるや、その大胆な性愛描写と自由恋愛の主張によってセンセーションを巻き起こした。一地方都市の青年群像が、ことに革命運動に加わったかどで首都から追放されて故郷に帰ってきたユーリーと主人公サーニンとが対照的に描かれることで、話が進められる。活動の場を失ったユーリーは生の無意味さと自分のちっぽけさを自覚して、最後には自殺する。サーニンは肉体の解放、自然な欲望の充足を主張して、実践する。「無制限に恋愛を享楽すべきです……恋愛の形式そのものも、偶然と突然と結合との限りない連鎖へと広がっていくでしょう」と。サーニンはユーリーの恋人カルサービナを暴力的に犯す。
[小平 武]
『中村白葉訳『サーニン』全2冊(岩波文庫)』