アルツィバーシェフ(読み)あるつぃばーしぇふ(英語表記)Михаил Петрович Арцыбашев/Mihail Petrovich Artsï bashev

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルツィバーシェフ」の意味・わかりやすい解説

アルツィバーシェフ
あるつぃばーしぇふ
Михаил Петрович Арцыбашев/Mihail Petrovich Artsï bashev
(1878―1927)

ロシアの小説家。小貴族、郡警察署長の息子として生まれる。1901年に『パーシャ・トゥマーノフ』で文壇に登場。初めはリベラルなテーマを扱っていたが1905年の革命ころから性と暴力と死を主要なテーマとするようになり、死に脅かされている人間の生の無意味さを主張した。自由恋愛の鼓吹、人間は何をしても責任は伴わぬとうそぶく極端な個人主義と享楽主義は、日本でも明治末から大正期にかけて注目を集めた。たとえば作家広津和郎(かずお)などに影響を及ぼしている。十月革命ののちポーランド亡命。代表作は『妻』(1904)、『ランデの死』(1904)、『サーニン』(1907)、『最後一線』(1912)など。

小平 武]

『昇隆一訳『アルツィバーシェフ名作集』(1975・青蛾書房)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アルツィバーシェフ」の意味・わかりやすい解説

アルツイバーシェフ
Artsybashev, Mikhail Petrovich

[生]1878.11.5. ハリコフ
[没]1927.3.3. ワルシャワ
ロシアの作家。 19世紀末から 20世紀初頭にかけてロシア文壇を風靡した近代主義の代表的な作家。ニーチェ的な個人主義の立場から生と死の問題,恋愛と性の問題を現実逃避的に追求し,十月革命後はポーランドへ亡命。代表作『サーニン』は,1905年の第1次ロシア革命の敗北に幻滅したインテリゲンチアが,暗い反動期のなかで道徳的に退廃し,性の放縦に走った時代風潮をいちはやく反映した長編小説。主人公サーニンの古いモラルの否定と性欲賛美の行動と思想は,「サーニズム」という言葉を生んだほど当時の青年男女にもてはやされた。『サーニン』の続編ともいうべき『最後の一線』U poslednei cherty (1912) では,性欲の賛美が自殺の賛美へと一転し,人生の醜さと無意味さが深刻に描かれている。ほかに『ランデの死』 Smert' Lande (04) ,『人間の波』 Chelovecheskaya volna (07) などがある。

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