日本大百科全書(ニッポニカ) 「シスター・キャリー」の意味・わかりやすい解説
シスター・キャリー
しすたーきゃりー
Sister Carrie
アメリカの作家T・ドライサーの長編処女作。1900年刊。都会にあこがれてシカゴにきたキャリー・ミーバーは、セールスマンのドルーエと同棲(どうせい)するうち、一流バーの支配人ハーストウッドを知りニューヨークへかけおちする。そこでキャリーは機会をつかみ、女優として成功するが、ハーストウッドはバーの経営に失敗、キャリーにも捨てられてガス自殺を遂げる。成功者と落後者の対比を軸にアメリカ社会の冷酷な実相をリアルに描き、物質文明の刺激のなかに生きる人間像を浮き彫りにする初期アメリカ自然主義小説の傑作。当時、「不道徳な作品」とみなされて出版が難航し、1000部だけ発行されたが500部も売れなかった。
[大浦暁生]
『小津次郎訳『シスター・キャリー』全3巻(1951・三都書房)』