改訂新版 世界大百科事典 「シトレンジ」の意味・わかりやすい解説
シトレンジ
citrange
Poncirus trifoliata Raf.× Citrus sinensis Osbeck
カラタチとスイートオレンジの雑種の総称。Citrus trifoliata(カラタチの旧学名)とorangeの合成語(cit+range)である。1897年カラタチの強い耐寒性に注目し,スウィングルW.T.SwingleとウェーバーH.J.Webberがアメリカのフロリダでオレンジとの交配を始めた。その雑種群は1905年,育成者によりシトレンジと命名され,耐寒性かんきつ類として紹介された。その後,ウイルス病,センチュウなどの耐病虫性台木として注目された。日本には1918年に可食性の品種ラスクが,52年台木用の品種トロイヤーが導入された。とげはカラタチに比べ小さい。葉は複葉だが必ずしも三葉とは限らない。半落葉性。花はカラタチより1ヵ月遅く5月ころ咲く。白色5弁でカラタチに似る品種が多い。子房に微毛がある。果実はオレンジより小さく,一般に苦みなどカラタチの不良形質が残る。実用的食用品種はないが,さらに改良が進められている。おもにかんきつ類の台木にされるが,果実が美しいので観賞用として植木,鉢物,垣根にもなる。また可食品種の果実はマーマレードなどにされる。
執筆者:山田 彬雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報