カラタチ(読み)からたち

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カラタチ」の意味・わかりやすい解説

カラタチ
からたち
[学] Poncirus trifoliata Rafin.

ミカン科(APG分類:ミカン科)の落葉低木。中国名は枸橘(くきつ)。カラタチ属に属するがミカン属とすることもある。高さ2~3メートル。枝は緑色、扁平(へんぺい)で角張り、大きな刺(とげ)がある。葉は互生し、3小葉からなる複葉で、葉柄に翼がある。小葉は楕円(だえん)形ないし倒卵形、長さ2~3.5センチメートルで、縁(へり)に低鋸歯(きょし)があり、表面に油点(やや透明な精油の小点)がある。4月、葉の展開に先だって、白色、径3~4センチメートルの5弁花を単生する。花弁はへら形で小さく、萼片(がくへん)は5枚、雄しべは約20本で、花柱と子房に短毛を密生する。果実球形、径約3センチメートルでビロード状の毛があり、10~11月に黄色に熟すが、酸味が強くて食べられない。

 中国中部原産で、日本には古代に渡来した。土地はとくに選ばず、強い剪定(せんてい)も可能で、耐寒性があり、北海道南部でも育つ。アゲハチョウ類の幼虫が葉を食害する。繁殖は実生(みしょう)または挿木による。生け垣に用い、ミカン類の接木(つぎき)の台木にする。名は唐橘(からたちばな)の略。キコク(枳殻)と称し、未熟果を健胃目的薬用にするが、現在市場で枳殻、枳実(きじつ)の名で取り扱われているものはダイダイ、ミカン、ナツミカンの未熟果がおもである。

小林義雄 2020年10月16日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カラタチ」の意味・わかりやすい解説

カラタチ
Poncirus trifoliata

ミカン科の落葉低木。中国原産であるが,古くから生垣などに植えられる。高さ 2mぐらい。枝は緑色で角張り,5cmほどのとげが互生する。葉は柄に翼があり,3出複葉。小葉は楕円形で細い鋸歯がある。早春に,直径 4cmの5弁の白花が開く。果実は直径 3cmぐらいで緑のビロード状。秋には黄色く熟し,芳香があるが食用にならない。種子は 50ぐらい含まれる。ミカン類の接木 (つぎき) の台にし,未熟の果実を乾燥したものを枳殻 (きこく) といい,胃の薬に用いる。

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