日本大百科全書(ニッポニカ) 「シュプレマティズム」の意味・わかりやすい解説
シュプレマティズム
しゅぷれまてぃずむ
suprematism
ラテン語のsupremus「至高」を起源とする絵画理論。至高主義または絶対主義と訳されている。第一次世界大戦の初期にロシアの画家マレービチによって提唱されたもので、対象の極端な簡略化を求め、純粋感性を絶対とする絵画理論である。マレービチは『セザンヌからシュプレマティズムへ』というパンフレットを書くほか、1914年には『ダイナミックなシュプレマティズム』という作品を発表している。ソ連では抽象芸術の一種として規定していたが、長らく公式的には認められず、そのため百科事典の項目としても1920年代に登場したのち、スターリン死後の雪解けが訪れるまで採用されていない。このことは提唱者マレービチの評価とも密接につながり、現在もなおマレービチは全面的には容認されていないが、ロシアのシュプレマティズムの運動がその後の西ヨーロッパ美術に及ぼした影響はけっして小さなものではない。
[木村 浩]