マレービチ(読み)まれーびち(英語表記)Казимир Северинович Малевич/Kazimir Severinovich Malevich

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マレービチ」の意味・わかりやすい解説

マレービチ
まれーびち
Казимир Северинович Малевич/Kazimir Severinovich Malevich
(1878―1935)

ロシアの画家。キエフ(現、キーウ)近郊に生まれ、モスクワの絵画・彫刻・建築学校で学ぶ。1910年代に入ってからは、キュビスムとフトゥリスム(未来派)の融和を目ざして、しだいに抽象絵画へと傾斜した。1913年、未来派オペラ『太陽の征服』を手がけた際、後に「シュプレマティズム」(至高主義・絶対主義)とよばれる純粋抽象に目ざめる。「ダイヤのジャック」(1910)、「ロバ尻尾(しっぽ)」(1912)などの展覧会に出品。1915年の「最後の未来派絵画展―0,10」(ゼロを目ざす10人の意)展に出品した『黒い正方形』(モスクワ、トレチャコフ美術館)は、白地の背景の上に黒い正方形だけを描いたもので、今日の抽象画の一つの出発点となった記念すべき作品である。革命後はビテプスクの美術学校で後進の指導にあたった時期もある。また、1918年にはマヤコフスキー戯曲『ミステリヤ・ブッフ』の舞台美術を手がけた。しかし、1930年代に入るとソ連美術界は抽象美術デカダン派のものときめつけ、マレービチもふたたび具象的な仕事に戻ろうとしたが、大きな成果をあげぬまま病に倒れ、レニングラード(サンクト・ペテルブルグ)に没した。死後ますます抽象美術への風当たりは強く、ほとんど抹殺に近い状況にあったが、ようやく第二次世界大戦後の雪どけ以降、再評価され始めている。しかし、西側での研究が盛んで、旧ソ連での研究は1980年代に始まった。

木村 浩]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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