シリアル・ノミネーション(読み)しりあるのみねーしょん(その他表記)serial nominations

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

シリアル・ノミネーション
しりあるのみねーしょん
serial nominations

世界遺産の登録に際し、同じテーマ、ストーリーでくくられる資産群を一つのまとまりとして関連づけ、全体として世界遺産の要件を満たす「顕著な普遍的価値」を有するものとして資産を推薦すること。シリアルserialは連続する、連続性のある、ノミネーションnominationは指名、推薦を意味する。

 ユネスコ国連教育科学文化機関)の世界遺産委員会が定めた「世界遺産条約履行のための作業指針」には、(1)同一の歴史・文化群、(2)地理区分を特徴づける同種の資産、(3)同じ地質学的、地形学的形成物、または同じ生物地理区分もしくは同種の生態系に属する関連した構成要素が、個々の部分ではそうでなくとも、全体として顕著な普遍的価値を有するもの、と規定されている。一つの締約国の領域内に全体が位置する場合もあれば(連続性のある資産)、異なる締約国の領域にまたがる場合もある(連続性のある国境を越える資産)。

 ユネスコは、1990年代になって、単体では世界遺産の登録基準を満たす「顕著な普遍的価値」を認めにくくても、連続した遺産群としてくくれば価値が認められるようなものを積極的に登録するようになり、シリアル・ノミネーションでの推薦・登録が広がった。

 2005年に登録された「シュトルーベの測地弧」は、ドイツ出身のロシアの天文学者シュトルーベが地球の測量のために設けた三角点群で、北極海から黒海まで10か国34か所にまたがる、もっとも規模の大きなシリアル・ノミネーションの例である。

 日本でも、2004年(平成16)に登録された、三重・奈良・和歌山の3県にまたがる「紀伊(きい)山地霊場と参詣道(さんけいみち)」、2015年に登録された8県にまたがる「明治日本の産業革命遺産 製鉄製鋼造船石炭産業」などが該当する。

[佐滝剛弘]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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