日本大百科全書(ニッポニカ) 「シロギス」の意味・わかりやすい解説
シロギス
しろぎす / 白鱚
[学] Sillago japonica
硬骨魚綱スズキ目キス科に属する海水魚。単にキスともよばれる。北海道以南の日本各地、西太平洋からインド洋にかけて広く分布し、内湾や沿岸の砂泥底に生息する。体は延長し、前方で丸みを帯びる。吻(ふん)は長く、口は小さい。体色は背側は淡黄褐色で、腹側は銀白色を帯びる。背びれは12棘(きょく)、20~23軟条、側線鱗(そくせんりん)数は70個、脊椎(せきつい)骨数は35個。産卵期は6~9月で、分離浮性卵を産む。受精卵の直径は0.6~0.7ミリメートルで、約20時間で孵化(ふか)する。抱卵数は2年魚で2万~3万粒、3年魚で3万~5万粒。
食性は肉食性で、未成魚は端脚類(ヨコエビ)や多毛類(ゴカイ)を、成魚はエビ類や多毛類などを捕食する。遊泳層は、普通、海底から15センチメートル前後の範囲内で、潮の流れに逆らって泳ぐ習性が強い。成長は遅く、1年で全長約10センチメートル、2年で約18センチメートル、3年で約21センチメートルとなり、極限全長は28センチメートルくらい。底流し網、ごち網、巻刺網、釣りなどで漁獲される。とくに釣りの対象魚として人気がある。
[谷口順彦]
釣り
船釣りと海岸や防波堤からの投げ釣りがある。船釣りは、水深5メートル前後の浅場をねらうときと、水深10メートル以上のときとで釣り方を変えたほうがよい。浅場では、1.8~2.4メートルのスピニング竿(ざお)で、オモリ負荷10~15号の先調子に小型スピニング・リールをつけ、キス用天ビンからハリス0.8~1.5号約50センチメートル、枝ハリス1本をつけた仕掛けで沖めに投入し、ゆっくりと手前に誘う。魚信で早合わせをせずに軽く竿を立てる。10メートル以上の水深では、オモリ15号でバランスのとれる竿がよい。船からまっすぐ下に仕掛けを沈め、オモリが底についたなら、ゆっくりと竿を上下に動かして誘う。底から30~40センチメートル、オモリがあがるのを目安にする。
海岸や防波堤からの投げ釣りは、3.6~4.2メートルの専用竿を用いる。リールはスピニングで軽量の投げ専用。道糸は25メートル単位で色が違う専用糸2~3号。この先に専用テーパーライン(力糸)を結び、投げるときのショック切れを防ぐ。各種市販されているキス投げ用天ビンに、枝鉤(ばり)2本から多い人で6本をつけた仕掛けを結ぶ。正確にまっすぐ投げることから始め、しだいに飛距離を伸ばすことを心がける。船釣り同様に早合わせは禁物で、静かに手前に誘って探る。餌(えさ)はジャリメ(イソゴカイ)、アオイソメなどのイソメ類を用いる。
[松田年雄]
食品
一年中味はあまり変わらないが、初夏のころがうま味がある。淡泊な白身であるため、いろいろな料理に幅広く使うことができる。新鮮なものは刺身、吸い物の種、酢の物、すし、てんぷら、フライなどに利用できるし、塩焼きはとくに味がよい。加工品としては、みりん干し、干物にされ、上等のかまぼこに使われることもある。
[河野友美]