日本大百科全書(ニッポニカ) 「海釣り」の意味・わかりやすい解説
海釣り
うみづり
海水魚を対象とする釣りの総称。一般に釣り方や釣る場所によって、いくつかに海釣りを区別する。そのおもなものは、沖釣り、磯(いそ)釣り、投げ釣り、防波堤釣りの四つである。
[松田年雄]
沖釣り
船による釣りで、ごく水深の浅い所ではハゼ、シロギス、カレイ、アイナメなどが対象魚。浅場の船釣り、近場の船釣りといった呼び方もする。水深の深い所ではキンメ、アコウ、ムツ、メヌケ、タラなどを釣る。釣り竿(ざお)、リールが発達した現在、釣り人は水深800メートル前後までに挑戦している。これを深場釣り、深海釣りともいう。タイ、イサキ、アジ、サバ、メバル、カサゴなどは浅場釣りと深海釣りの中間的な水深である。
沖釣りはさらに、船の動きからも「流し釣り」「かかり釣り」「引き釣り」に分けられる。流し釣りは船を潮の流れに乗せて流しながら釣る方法で、錨(いかり)などを打って船を海上に止めて釣るかかり釣りに対比される。引き釣りはトローリングともよばれ、擬餌(ぎじ)を使って船をゆっくり走らせこれを引く。
釣り人を乗せる船は職漁船に対して遊漁船ともいう。2~3人乗りのものから、大型船は40人以上を乗せられ、魚群探知機、レーダー、無線、船舶電話などを装備している。遊漁船には乗合船と仕立船がある。乗合船は決められた出港時間までに船宿に行けば、満員にならない限り予約なしでも乗船できる。数人しか釣り人が集まらなくても出港する。一方、仕立船は予約を前提とし、借切りの船になる。グループだけで釣るにはこの仕立船が向くが、乗合船よりも船代はやや割高になるのが普通である。
乗合船、仕立船のない地方では、便乗乗合船という形式もとる。職漁船に便乗させてもらって釣る方法だが、職業としての漁が優先するから、出港や帰港時間などすべて相手の決めたものに従うことになる。乗合船、仕立船の発達した所では、貸し竿、釣り仕掛け、餌(えさ)を常備してあり、手ぶらで出かけても1日の釣りが楽しめる。
[松田年雄]
磯釣り
磯からの釣りをさす。その対象魚はイシダイ、イシガキダイがとくに人気があり、この二つを石物(いしもの)とよぶ。ほかにブダイ、メジナ、クロダイ、ウミタナゴなど対象魚も多い。超大物釣りの対象魚にはモロコ、イソマグロ、クロヒラアジなどもあり、引きの強さと一気に突っ走るスリリングな魚にはシマアジ、ヒラマサがある。釣り場は、地続きの磯を地磯、渡船を利用する沖にある磯を沖根、沖磯などという。場所によって足場が悪く危険も伴うので、全国的な組織をもつ全日本磯釣連盟や日本磯釣連合会では、海難防止のために救命用具をかならず携行するように決めている。
[松田年雄]
投げ釣り
竿とリールで、仕掛けを遠くに投げる。この意味では、磯釣りのなかにも投げ釣りはある。しかし一般には、海岸の砂浜または防波堤からシロギス、イシモチ、カレイなどをねらう釣りを投げ釣りといい、海岸の投げ釣り、防波堤の投げ釣りと区別することもある。
投げ釣り専用の竿と、スピニング・リールの組合せで100メートルから120メートル前後遠方に投げる。この投げる距離だけを競うのがスポーツ・キャスティングで、規定された太さの糸、オモリで投げる。また擬餌鉤(ぎじばり)を使い、海岸から投げて、これをゆっくりとリールで巻き寄せ、スズキやイナダ、ヒラメなどを釣るのをサーフトローリングという。
[松田年雄]
防波堤釣り
西日本では波止(はと)釣りとよぶ。漁港の防波堤、岸壁、消波ブロックなどが釣り場。沖にある防波堤には、最寄りの渡船宿から渡してもらう。季節によって、沖から多彩な魚が寄ってくるし、その防波堤近くに定住する魚もあるので、シーズンオフはほとんどない。
以上がおもな海釣りだが、埋立てが進む前に行われた東京湾でのアオギスの脚立(きゃたつ)釣りなどのような特殊なものもある。このほか、最近は各都道府県で、有料海釣り桟橋の建設計画が進められており、一部地域では完成して釣り人の人気を集めている。
なお、海釣りを楽しむには、特殊な地区を除き入漁料の徴収はない。このため、乱獲などによって漁民と釣り人の間でのトラブルも起きがちになっている。地元で自主規制した餌は使わず、釣り場を汚さないなどのマナーを守って楽しむことがたいせつである。
[松田年雄]