改訂新版 世界大百科事典 「ジケトピペラジン」の意味・わかりやすい解説
ジケトピペラジン
diketopiperazine
ピペラジンのメチレン基-CH2-のうちの2個をカルボニル基C=Oで置換した型の化合物の一般名。カルボニル基の位置に応じて3種の異性体があるが,ふつうは2,5-ジケトピペラジンをいう。
グリシンH2NCH2COOHの無水物に相当するので,グリシン無水物,シクログリシルグリシンともいう。無色の板状結晶で,融点311~312℃(分解)。260℃付近で昇華が始まり,305℃で失透する。グリシンエチルエステル塩酸塩から合成される。また広義には,同種または異種のα-アミノ酸の無水物に相当する次のような環状構造をもつ化合物一般をもジケトピペラジンと総称する。
酸またはアルカリによって加水分解され,ジペプチドを経由してアミノ酸となる。ジケトピペラジンは,α-アミノ酸あるいはそのエステルなどを放置したり,加熱したりすると容易に生成し,またタンパク質の高温加水分解の際にも生成しやすい。このためかつて,これがタンパク質の構成単位であるという〈ジケトピペラジン説〉があったが,現在では否定されている。
執筆者:竹内 敬人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報