改訂新版 世界大百科事典 「ジュウケツキュウチュウ」の意味・わかりやすい解説
ジュウケツキュウチュウ (住血吸虫)
schistosome
扁形動物吸虫綱の住血吸虫科Schistosomatidaeに属する寄生虫の総称。ヒトを固有宿主とするもののなかで重要なものは,ニホンジュウケツキュウチュウSchistosoma japonicum,
マンソンジュウケツキュウチュウS.mansoni,ビルハルツジュウケツキュウチュウS.haematobiumの3種である。いずれも雌雄異体である。前2種は門脈内に寄生するため,虫卵の栓塞によって,腸管壁,肝臓その他の臓器組織に虫卵結節が形成される。これが病害作用のおもな原因となるもので,たとえば肝臓では肝繊維症,肝硬変をきたす。ビルハルツジュウケツキュウチュウは骨盤部静脈に寄生し,雌虫は膀胱壁,尿管壁で産卵するため,血尿や膀胱炎の原因となるほか,膀胱癌を誘発するともいわれている。日本住血吸虫症は,かつて日本でも甲府盆地などに流行がみられたが,現在は中国大陸,フィリピンなどに流行地が存在する。マンソンジュウケツキュウチュウはアフリカやプエルトリコ,ブラジルなどの中南米に,ビルハルツジュウケツキュウチュウはアフリカ,中近東などに分布する。これらのほか,鳥類に寄生するジュウケツキュウチュウがあり,それらの幼虫(ケルカリア)がヒトに侵入して皮膚炎の原因となることがある。
→ニホンジュウケツキュウチュウ
執筆者:小島 荘明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報