駆虫薬(読み)クチュウヤク

デジタル大辞泉 「駆虫薬」の意味・読み・例文・類語

くちゅう‐やく【駆虫薬】

寄生虫害虫を駆除する薬剤。駆虫剤虫下し

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精選版 日本国語大辞典 「駆虫薬」の意味・読み・例文・類語

くちゅう‐やく【駆虫薬】

  1. 〘 名詞 〙くちゅうざい(駆虫剤)〔医語類聚(1872)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「駆虫薬」の意味・わかりやすい解説

駆虫薬
くちゅうやく

駆虫剤。体内に寄生する回虫、蟯虫(ぎょうちゅう)、鞭虫(べんちゅう)、十二指腸虫(鉤虫(こうちゅう))、条虫、日本住血吸虫、肺ジストマ肝ジストマ、肝蛭(かんてつ)などの蠕虫(ぜんちゅう)類を駆除する薬剤で、一般に虫下しともいわれる。寄生虫を殺滅する作用を有するものと、虫体を麻痺(まひ)させて排出を促す作用を有するものとの2種がある。寄生虫の種類と寄生部位によって用いられる薬剤の種類も異なるが、虫体に対する親和性が大で、生体に対する親和性の少ないものが望まれる。とくに腸管内に寄生する寄生虫の駆除には腸管から吸収されにくいものが望まれる。駆虫剤は一般的には空腹時に服用し、のちに寄生虫を腸内容物とともに排出させるため緩下剤を服用するが、下剤を必要としないものもある。最近は生活環境がよくなり、寄生虫の発生が少なくなって、駆虫剤の使用も減少してきた。

 駆虫剤には次のようなものがある。

(1)サントニン 代表的な駆虫剤で回虫や蟯虫などの駆虫に用いる。虫体を麻痺させて腸管の蠕動で排出される。下剤を併用する。黄視、肝障害など副作用があるため、アメリカでは使用されていない。キク科のシナヨモギミブヨモギクラムヨモギの種子状をした小花頭のシナ花(通称セメンシナsemen cina)の有効成分である。無味・無臭の白色の結晶性粉末で、合成にも成功している。日本では古くはセメン、セメン円とよばれていたことがあり、単独またはカイニン酸との合剤として回虫の駆除に用いられた。

(2)カイニン酸 カイジンソウ(マクリ)の有効成分で回虫の駆除に用いられる。副作用はサントニンより少ない。マクニン、ジゲニンなどの名称がある。

(3)ピペラジン系 おもなものにリン酸ピペラジンとクエン酸ジエチルカルバマジンがある。リン酸ピペラジンは蟯虫、回虫の駆除に用いる。副作用は少ない。成人では1日1回2~3.5グラムを服用し、2~7日間連用する。クエン酸ジエチルカルバマジンはフィラリア症の特効薬で、製剤は「スパトニン」という名で市販されている。

(4)パモ酸ピランテル 回虫、蟯虫、ズビニ鉤虫に有効で、体重1キログラム当り10ミリグラムを1回投与する。市販名「コンバントリン」。

(5)パモ酸ピルビニウム 蟯虫、回虫、鉤虫の駆除に用いる。体重1キログラム当り2~5ミリグラムを1回投与する。赤い色素のため便が赤くなる。市販名「ポキール」。

(6)ビチオノール 肺吸虫、横川吸虫、肝吸虫の駆除に用いる。体重1キログラム当り30~50ミリグラムを隔日に投与する。市販名「ビチン錠」。

(7)酒石酸アンチモニルナトリウム 日本住血吸虫、肝ジストマの駆除に注射液として用いられる。ナトリウムをカリウムにかえたものを吐酒石という。

(8)その他 カマラ、ザクロ皮は条虫の駆除に煎剤(せんざい)として用いられる。メンマ根(フィルマロン油)、ヘノポジ油(有効成分アスカリドール)、四塩化エチレンヘキシルレゾルシンなど副作用が強いため、日本では用いられていない。アメリカではヘキシルレゾルシンの腸溶製剤が回虫、鉤虫、蟯虫、鞭虫などの駆除に用いられているが、これは殺虫的に作用する。

[幸保文治]

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改訂新版 世界大百科事典 「駆虫薬」の意味・わかりやすい解説

駆虫薬 (くちゅうやく)
anthelmintic

俗に〈虫くだし〉ともいい,体内各所に寄生する各種寄生虫を排出する薬物の総称であるが,一般には腸管内の寄生虫を駆除する薬物を呼ぶことが多い。宿主の組織に対しては作用せず,虫体だけに作用するものが望ましいことはいうまでもないが,とくに腸管内駆虫薬は,それ自身吸収されず,腸管内濃度が高く保たれ,寄生虫にだけはたらくものがよい。駆虫薬には,寄生虫を殺す殺寄生虫薬と,虫を麻痺させて排出を促す排寄生虫薬がある。一般に駆虫薬の使用に際しては,(1)消化しやすいものを少量とり,腸管内容物を少なくして薬物が虫体に作用しやすくする,(2)薬物によって麻痺した虫体と残った薬物を排出するため,駆虫薬投与と同時あるいは1~3時間後に下剤を投与する。この目的には,薬物の吸収を促進することのあるヒマシ油より,硫酸マグネシウムのような塩類下剤やセンナ,ビサチンなどの緩下薬がよい,(3)駆虫薬投与前後の1~2日は,脂溶性薬物の吸収を促進する脂肪分やアルコール飲料は避けることが望ましい。とくに毒性の強い駆虫薬の使用に際してはこの注意が必要である。

 寄生虫はそれぞれ生体内での生活様式が異なるため,これに対する駆虫薬も一様ではない。おもな駆虫薬には次のようなものがある。(1)サントニン 主としてカイチュウ(回虫)の特効薬であるが,ギョウチュウ(蟯虫),ベンチュウ(鞭虫)にも有効。黄視,頭痛,吐き気などの副作用がみられる。(2)マクリおよびカイニン酸 紅藻類のマクリが煎剤として用いられてきたが,その有効成分カイニン酸が抽出あるいは合成され,サントニンとの合剤がカイチュウ駆除に用いられる。(3)ピペラジン カイチュウ,ギョウチュウに有効。アジピン酸塩,リン酸塩などのものが用いられ,通常用量では副作用はない。下剤を必要としない。(4)ジエチルカルバマジン ピペラジンの誘導体で,フィラリア特効薬。カイチュウ,ギョウチュウにも用いられる。比較的副作用は少ないが,頭痛,消化管障害などがみられる。(5)ヘキシルレゾルシン カイチュウ,コウチュウ(鉤虫),ギョウチュウ,ベンチュウなど有効範囲が広く,殺虫作用もある。局所刺激作用が強く,消化管障害が大きいので,消化管に潰瘍のある場合は用いない。空腹時に服用し,下剤を併用する。(6)ヒドロキシナフトエ酸ベフェニウム センチュウ(線虫)類とくにコウチュウによく効く。腸管からほとんど吸収されず,副作用も吐き気,嘔吐以外はみられない。(7)パモ酸ビルビニウム ギョウチュウにすぐれた効果がある。1回の投与で100%近い駆除がみられる。副作用は悪心,嘔吐,下痢など。(8)四塩化エチレン コウチュウ,カイチュウに有効。殺虫作用もある。吸収されると毒性が強いので,脂肪性食物の摂取を避けるほか,ヒマシ油以外の下剤を用いる。このほか,肺や肝吸虫などに対してはビチオノールなどがある。各駆虫薬とも,老人,虚弱者,肝臓・腎臓障害時,妊娠など体調によって使用に注意を要する。
寄生虫
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百科事典マイペディア 「駆虫薬」の意味・わかりやすい解説

駆虫薬【くちゅうやく】

俗に虫下しとも。カイチュウジョウチュウその他の内部寄生虫の駆除に用いる薬物。腸内駆虫剤は投薬前に空腹にし,使用後下剤などで虫体を排除することが多い。おもな駆虫剤を寄生虫別にあげると次のようになる。1.カイチュウ。サントニン,カイニン酸など。2.ジョウチュウ(さなだ虫)。綿馬(めんま),ビチオノールなど。3.コウチュウ。四塩化エチレン,チモール,ベフェニウム剤など。4.ギョウチュウ。ピペラジン,ピルビニウム,パモエートなど。5.フィラリア。ジエチルカルバマジンなど。6.日本ジュウケツキュウチュウ。チブナール,フアジンなど。副作用が強いものもあり,各駆虫薬とも体調によって使用に注意を要する。

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栄養・生化学辞典 「駆虫薬」の解説

駆虫薬

 殺寄生虫薬ともいう.虫下しと俗称する.寄生虫を駆除する薬剤.

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世界大百科事典(旧版)内の駆虫薬の言及

【カイニン酸】より

…1953年村上信三,竹本常松によって,駆虫薬として古くから用いられていたマクリ(カイニンソウ)の有効成分として抽出されたもので,その後合成されてカイチュウ(回虫)に,ときにギョウチュウ(蟯虫),ベンチュウ(鞭虫)にも用いられる。カイチュウの運動を初め興奮させ,後,神経および筋肉に作用して痙攣(けいれん),麻痺をおこし,運動能力を低下させ,腸管の蠕動(ぜんどう)によって体外に虫体を排出させる。…

※「駆虫薬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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