甲府盆地(読み)コウフボンチ

デジタル大辞泉 「甲府盆地」の意味・読み・例文・類語

こうふ‐ぼんち〔カフフ‐〕【甲府盆地】

山梨県中央部、甲府市を中心とする盆地。ブドウ・桃の産地。

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精選版 日本国語大辞典 「甲府盆地」の意味・読み・例文・類語

こうふ‐ぼんちカフフ‥【甲府盆地】

  1. 山梨県中央部にある盆地。糸魚川静岡構造線の東縁に沿う。南側は御坂山地、北、東側は関東山地、西側は赤石山脈に限られる。笛吹川、釜無川などの河川が形成した盆地床は古くからの水田地帯で、扇状地には畑作地が多く、モモ、ブドウ、メロンなどの果樹栽培が行なわれる。

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日本歴史地名大系 「甲府盆地」の解説

甲府盆地
こうふぼんち

赤石あかいし山脈・秩父ちちぶ山地・御坂みさか山地などの山塊で四周を囲まれ、逆三角形状の平坦地を形成する、日本有数の盆地。面積約三五〇平方キロ。巨摩山地を挟んで糸魚川いといがわ―静岡構造線が西接する。周辺山地が急峻なため河川による砂礫運搬が激しく、御勅使みだい川扇状地・釜無川扇状地・かね川扇状地など扇状地地形の発達が著しい。河川の流れは急で、大雨に伴い幾多の洪水をもたらした。盆地の東西には笛吹川と釜無川(富士川)の二大河川が流下し、流域に広い沖積低地を形成する。笛吹川以東は峡東きようとう、釜無川以西は峡西きようさい、両河川の間は峡中きようちゆう(「こうちゅう」ともよんだ)と称される。気候は気温の年較差が大きい内陸性で、甲府市の最寒月平均気温は一月の一・八度、最暖月平均気温は八月の二五・七度を測る。年降水量は全国平均の三分の二程度と少なく、甲府市で一〇九三ミリである。冬には八ヶ岳颪、あるいは甲州名物からっ風と俗称される強い北西の季節風が盆地一帯で観測される。

周囲を山々で囲まれた外観によるものか、太古の時代甲府盆地は一面の湖で、人々は周辺の丘陵上や山麓で生活していたとする盆地湖水伝説が、現甲府市の穴切あなぎり神社や中道なかみち石和いさわ両町の佐久さく神社の社記などに色濃く残されている。しかし地質学上沖積世以降に盆地全域が湖と化したとは考えられず、旧石器時代から古噴時代にかけての遺跡の分布状況からも湖水伝説は否定される。甲府盆地で人々の生活の足跡が明らかとなるのは約二万五千年前で、中道町立石たていし遺跡から旧石器時代の石器が出土している。また山梨市のあに川や甲府市のあい川の河床からはナウマンゾウの化石が発見されており、三万年以上前から大型獣を追う人々が盆地に生活した可能性が高い。花粉分析の成果によれば、二万―三万年前の盆地の気温は現在より七―八度低く、トウヒ、ツガといった亜寒帯針葉樹が生育する寒冷な気候であった。

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百科事典マイペディア 「甲府盆地」の意味・わかりやすい解説

甲府盆地【こうふぼんち】

山梨県中央部の内陸盆地。西と南は直線状の断層崖で限られた断層盆地で,盆地内には御勅使(みだい)川扇状地をはじめ多くの扇状地が複合している。釜無川笛吹川が盆地内の二大河川。水田,畑のほか,果樹園,桑園も広い。東部では特にブドウ,モモの生産が盛ん。中心は甲府市。
→関連項目市川大門[町]一宮[町]塩山[市]春日居[町]勝沼[町]雁坂峠甲西[町]笹子峠昭和[町]白根[町]田富[町]玉穂[町]富士川[町]富士川双葉[町]増穂[町]御坂山地八代[町]山梨[県]山梨[市]竜王[町]若草[町]

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改訂新版 世界大百科事典 「甲府盆地」の意味・わかりやすい解説

甲府盆地 (こうふぼんち)

山梨県中央部を占める構造盆地。盆地床は中央部で東西約25km,南北約15km。河川の堆積物で厚くおおわれ,標高は250~400mである。本州中央部を横断する構造線,フォッサマグナの西縁の断層による落込みで形成されたもので,北の松本盆地,諏訪盆地に連なる地溝帯の一画を占める。北側の秩父山地側の断層線は火山におおわれて不明だが,東の御坂(みさか)山地,西の赤石山脈前衛の巨摩(こま)山地とは明瞭な断層線によって画されている。これらの山地の山麓には多数の扇状地が作られており,西部の御勅使(みだい)川扇状地や東部の金川扇状地などは模式的なものとして知られる。扇状地の背後には西部には市之瀬台,南部には曾根丘陵など一段高い台地がある。盆地西部には赤石山脈北端の甲斐駒ヶ岳から流れ出て塩川を合流する釜無(かまなし)川,東部は秩父山地の甲武信ヶ岳を源とし,重川,日川,金川,荒川などを合流する笛吹川が流れ,盆地南西部で合わさって富士川となり,峡谷を刻み南流して駿河湾に注ぐ。釜無・笛吹両川の合流点付近には沖積原がひらけている。

 盆地の開発は古く,各地に縄文時代,弥生時代の遺跡がみられる。律令時代になると扇状地は官牧として利用され良馬を産した。盆地の本格的な開発は中世になって荘園が各地に設けられ,次いで戦国時代に武田氏によって盆地統一が果たされて以降で,武田信玄は治水事業に力を入れ,釜無川と御勅使川の合流点付近に信玄堤を作るなど大きな成果をあげた。江戸時代になると水利の悪い扇状地の開田に力が入れられ,釜無川の水を御勅使川に流して開田化をはかった徳島堰などが設けられた。明治以降盆地の農業は盆地底部の水田稲作と扇状地での養蚕が主であったが,盆地の気候は内陸性で,年間降水量は1100mmと比較的少なく,冬季は低温ではあるが夏季は高温となるため果樹栽培に適し,勝沼や甲府市西郊では早くからブドウ栽培が行われた。第2次世界大戦後になると養蚕の衰退とともにブドウ,モモの栽培が盛んとなり,とくに盆地東部では水田も果樹園に切り替え,果樹専業農家に転じたところが多い。盆地西部の御勅使川扇状地付近でも,戦前から果樹栽培が盛んであった西野地区を中心として果樹主体の農業地域となっている。盆地の耕地利用率は果樹園が第1位で養蚕は曾根丘陵の一部で営まれるにすぎない。盆地中央を占める甲府市を中心に東部に甲州市,山梨市,北西部に韮崎市などの都市があり,県内の人口の大部分が集中している。近年は自動車交通の発達とともに甲府の商圏が広がり,盆地全域が甲府の勢力圏となっている。盆地北部を中央本線が,中央部を国道20号線(甲州街道)と中央自動車道がそれぞれ東西に貫いており,京浜と名古屋方面を結ぶ交通動脈上にあたる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「甲府盆地」の意味・わかりやすい解説

甲府盆地
こうふぼんち

山梨県中部にある盆地。フォッサ・マグナ (大地溝帯) のなかにあり,西を赤石山脈,北東は秩父山地,南は御坂山地に囲まれる。北東から笛吹川,北西から釜無川が流入し,富士川となって南西から流出。縁辺部は多数の支流が形成した扇状地が複合し,盆地底では基盤の火山岩層が河川の堆積物で厚く覆われる。気温の年較差が大きく,年降水量は約 1100mmで晴天が多く,典型的な内陸性気候。この気候をいかして,扇状地では果樹栽培が盛ん。東部は甲州市を中心にブドウ,笛吹市を中心にモモを栽培。西部では御勅使川の扇状地を中心に養蚕から果樹栽培に転換が進んでいる。盆地底は豊かな水田地帯で,野菜栽培も行なわれる。甲府市,甲州市,山梨市,韮崎市などが立地する。中央部に石和温泉,甲府市に積翠寺温泉湯村温泉御岳昇仙峡があり,各地に観光ブドウ園が設けられ,中央自動車道の開通に伴い観光客が増えている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「甲府盆地」の意味・わかりやすい解説

甲府盆地
こうふぼんち

山梨県中央部に位置する構造盆地。盆地底の標高は250~約400メートル。中央部で東西約25キロメートル、南北約15キロメートル。本州中央高地を南北に切る糸魚川‐静岡構造線(いといがわしずおかこうぞうせん)上の盆地で、長野盆地、松本盆地、諏訪(すわ)盆地に続くもの。北側の秩父(ちちぶ)山地の前衛山地との間の断層は不明であるが、東の関東山地、南の御坂(みさか)山地、西の赤石(あかいし)山脈前衛の巨摩(こま)山地とは断層により限られる。これら山地の山麓(さんろく)部には扇状地あるいは複合扇状地が発達し、御勅使川扇状地(みだいがわせんじょうち)、金川扇状地(かねがわせんじょうち)は模式的なものとして知られる。盆地内を流下する主要河川は西部では釜無川(かまなしがわ)、東部では笛吹川(ふえふきがわ)で、これらは盆地南西部で合流し鰍沢(かじかざわ)で富士川となり流出する。この合流点付近は沖積原となっている。甲府盆地の農業的土地利用は時代による変動が著しいが、最近では峡東(きょうとう)(盆地東部)と峡西(盆地西部)を中心とする果樹栽培(モモ、ブドウなど)が、かつての水田地帯である盆地底部、桑園地帯である盆地北東部、盆地南部あるいは盆地北西部の火山山麓斜面にまで拡大しつつある。これは、内陸性気候で年降水量が全国平均の70%前後で、かつ冬寒く夏高温であることにより、狭い農地からいかに高収入を得るかの努力の結果である。中心都市は甲府市。

[吉村 稔]

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世界大百科事典(旧版)内の甲府盆地の言及

【山梨[県]】より

…南には日本一の高峰富士山(3776m),北には開析された火山八ヶ岳(2899m)が広いすそ野を広げ,西には日本第2の高峰北岳(3192m)をもつ赤石山脈(南アルプス)が連なり,東部の桂川流域の郡内地方も御坂(みさか),丹沢の山なみにその面積の大半を占められている。県中央に位置する甲府盆地には,北東から笛吹(ふえふき)川,北西から釜無(かまなし)川が流入し,南西部で合流して富士川となり,駿河湾に注いでいる。甲府盆地は県内唯一のまとまった平地で,古代以来甲斐の中心的な地位を占めてきたため,周辺地域を含めて国中(くになか)と呼ばれてきた。…

※「甲府盆地」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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