ジョンソン伝(読み)じょんそんでん(その他表記)The Life of Samuel Johnson, LL. D.

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジョンソン伝」の意味・わかりやすい解説

ジョンソン伝
じょんそんでん
The Life of Samuel Johnson, LL. D.

イギリス弁護士ボズウェルが書いたイギリス伝記文学の最高傑作。1763年5月16日サミュエル・ジョンソン博士と会いその人格にひかれ、機会あるごとに博士の言動を細かく観察し、会話記録手紙を集め、ときには巧みに作為を加え、豊富な資料を駆使して博士の人物像を的確に描く。91年、ジョンソンの死後7年を経て出版。膨大な量の日記などとともに、いわばボズウェルの自伝の一部とも考えられる。

[平 善介]

『中野好之訳『サミュエル・ジョンソン伝』全3冊(1981~83・みすず書房)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジョンソン伝」の意味・わかりやすい解説

ジョンソン伝
ジョンソンでん
The Life of Samuel Johnson

スコットランド出身のイギリスの弁護士 J.ボズウェルが書いた伝記。 1791年刊。著者は若い頃 S.ジョンソンと知合い,ジョンソンを中心にして文芸や社会を論じる「文学クラブ」の会員となった。このクラブで当時の文人画家,政治家らとジョンソンとの間にかわされた議論や,ともに旅行したときのジョンソンの言動などを記録したボズウェルは,彼の死後にそれを整理してこの伝記を書き上げた。ジョンソンのきわめて個性的な行動と意見が,細かく記述されたエピソードを通していきいきと読者に伝えられ,イギリス伝記文学の最高傑作として知られている。著者の異常なほどのジョンソンへの傾倒から生れたこの伝記によって,今日でもジョンソンはイギリス人気質を代表する偶像的人物として親しまれている。

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世界大百科事典(旧版)内のジョンソン伝の言及

【伝記】より

…同時代の詩人五十数人の列伝と批評を試みたもので,伝記的批評としても逸品であった。この逞しくも魅力的な人物に師事し,彼の風貌,言行を残るくまなく描き切ったのが,ボズウェルの《ジョンソン伝》(1791)で,対象の言葉癖から体臭までをなまなましく浮かび上がらせた手腕においては,エッカーマンによる同種の企て《ゲーテとの対話》を上回るといっていい。ここに至って近代伝記ははっきりと成熟に達した。…

※「ジョンソン伝」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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