イギリスの弁護士。スコットランドに生まれる。伝記文学の最高傑作『サミュエル・ジョンソン伝』(1791)の作者。エジンバラとグラスゴーの大学で法律を学び、グラスゴー大学ではアダム・スミスの講義に出席。その後、ロンドンに出て文士仲間とともに数冊の詩文集を匿名で出版。1763年、S・ジョンソンと会い、その偉大な人格に心酔し、親交を結ぶ。その間、非凡な記憶力と鋭い観察力でジョンソンの言行を克明に記録し、手紙を集め、豊富な資料を駆使して、芸術的にみごとな統一のある『ジョンソン伝』を書いた。大陸旅行のおりには、コルシカ島独立を企てたパオリ将軍と会見し、『コルシカ事情』(1768)を書いて著述家としての名声を確立。また、ジョンソンに従ってスコットランドを旅行した記録『ヘブリディーズ諸島旅日記』(1785)も知られる。20世紀になって、赤裸々な生活の記録を含む日記など膨大な量の「私記」が発見され、次々と刊行されている。
[平 善介]
イギリスの文人,伝記作家,弁護士。エジンバラ生れ。エジンバラ,グラスゴー両大学で学び,弁護士となる。1762年より翌年にかけてロンドンに滞在,63年S.ジョンソンと会って以来,彼を崇拝する。その間遊びの遍歴も重ねる。63-66年大陸旅行をし,ボルテールやルソーとも会見した。66年故郷へ帰って弁護士として活躍を開始する。彼は一日女性と野外で〈大胆に〉情事を楽しんだかと思うと,翌日は法廷で数時間に及ぶ弁論を展開するという〈二面性〉をもっていた。ロンドンとエジンバラとの間を往来し,ジョンソン博士の〈文学クラブ〉に入り,彼との交友を深め,その間彼とともにスコットランド旅行を行う。その成果が《ヘブリディーズ島旅行日記》(1785)や伝記文学の傑作《サミュエル・ジョンソン伝》(1791)に結実する。ジョンソンの死後,国会に出ようと試みるが果たさず,憂うつ症に悩まされつつ没した。近年その膨大な日記が注目されている。
執筆者:榎本 太
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