スタイツ(読み)すたいつ(その他表記)Thomas A. Steitz

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スタイツ」の意味・わかりやすい解説

スタイツ
すたいつ
Thomas A. Steitz
(1940―2018)

アメリカの生化学者。1966年にハーバード大学分子生物学・生化学の博士号を取得。エール大学で分子生物物理学・生化学の教授、ハワード・ヒューズ医学研究所研究員を兼任。2009年、ヨナットラマクリシュナンとともに「リボソームの構造と機能に関する研究」によりノーベル化学賞を受賞した。

 細胞内にあるリボソームは、生命の設計図であるDNAの情報からタンパク質をつくりだす際に中心的な役割を担うが、その詳細な構造や働きはわかっていなかった。

 ノーベル賞同時受賞者のヨナットが1980年に世界で初めてリボソームの結晶化に成功し、2000年には、スタイツ、ラマクリシュナン、ヨナットの3人がそれぞれX線結晶解析の手法でリボソームの立体構造原子レベルで解明した。抗生物質の多くは、リボソームの働きを妨げて細菌を殺しているが、立体構造の解明によって新薬の開発にも道を開いた。

[馬場錬成 2018年10月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スタイツ」の意味・わかりやすい解説

スタイツ
Steitz, Thomas

[生]1940.8.23. ウィスコンシン,ミルウォーキー
[没]2018.10.9. コネティカット,ブランフォード
アメリカ合衆国の生化学者,分子生物学者。1962年ローレンス大学を卒業,1966年ハーバード大学で分子生物学と生化学の博士号を取得。ケンブリッジ大学の MRC分子生物学研究所の博士研究員を経て,1970年にエール大学に着任。1986年からハワード・ヒューズ医学研究所研究員。1990年にアメリカ科学アカデミーの会員となる。2009年,リボソームの複雑な構造と機能を解析した業績が評価され,ベンカトラマン・ラマクリシュナン,エイダ・ヨナットとともにノーベル化学賞を受賞した。スタイツは特に,1990年代末に X線構造解析での難問であった「位相決定問題」を解決する方法を開発,分解能を飛躍的に上げることで貢献した。2001年基礎医学での顕著な功績に対して贈られるローゼンスティール賞を受賞。ほかに,慶應医学賞(2006),ガードナー国際賞(2007)など受賞多数。

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