改訂新版 世界大百科事典 「スタージャン」の意味・わかりやすい解説
スタージャン
William Sturgeon
生没年:1783-1850
イギリスの電気物理学者。世界で初めて電磁石を製作し,世界最初の電気関係学会と電気ジャーナルを作った。ウィッティントンに生まれ,父親は靴屋で,スタージャンも靴職人の修業をしたのち,砲兵隊に入った。兵士勤めの期間に,独学で数学,ラテン語,ドイツ語などを学んだ。工作が得意で,電気の実験をした。1820年にウールウィッチで靴屋を開業した。かたわら学校やグループにおいて実験講義を行い,デモンストレーション用電磁器械を改良した。23年に,軟鉄棒にシェラックをかぶせてその上に裸線を巻いた電磁石を作った。電磁石は,発電機,電動機,電信機,電話機,誘導コイル,変圧器などおよそほとんどの電磁機器において能動部分となるものであり,この発明は電磁現象の実用化の基礎として重要である。32年の彼の電動機は回転式モーターの最初といわれている。1824年に東インド会社のアディスコム軍学校の実験講師となり,32年にはロンドンのアデレード実用科学陳列館の実験主任となった。36年に《電気・磁気・化学年報》を発刊し,翌年に〈ロンドン電気協会〉を設立した。これらは,今日の電気ジャーナルと電気学会のきわめて早い先駆とみなされる。40年からスタージャンはマンチェスターのビクトリア実用科学陳列館の主任となった。これら〈ビクトリア陳列館〉〈ロンドン電気協会〉や《電気・磁気・化学年報》はいずれも財政面から行き詰まり数年間しか続かなかった。スタージャンは失意と貧困のうちに世を去り,今日まで続いている電気ジャーナル《エレクトリシャン》(1861創刊)やイギリス電気学会の誕生を見ることができなかった。
執筆者:高橋 雄造
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報