食の医学館 「スパイス活用法」の解説
すぱいすかつようほう【スパイス活用法】
スパイスの語源は、ラテン語で「特別の種類」を意味する「SPECIES」。輸送の未発達だった時代のヨーロッパの人々にとって、東南アジアなどの熱帯地域を原産とするスパイスは、まさに特別な価値をもつ貴重品だったわけです。
コロンブスの新大陸発見、マゼランの世界一周などの偉業も、もとはスパイスさがしの旅からはじまったもの。スパイスは人間の歴史に大きな影響を与えた存在といえます。
ところで、香辛料と訳されることもあって、スパイスには「辛い」イメージがつきものですが、多くのスパイスのうち、ほんとうに辛みをもったものは1割程度にすぎません。全体としてみれば酸味やにがみ、渋みなど、その持ち味はじつにさまざま。なかにはリコリスのように、強い甘みを特徴とするものもあります。
ちなみに、アメリカにおけるスパイスの定義は以下のとおりです。
「飲食物の風味付けをするために、副材料として用いる芳香性食物の一部で、嗜好的(しこうてき)な香り、辛み、色をもつものの総称」。つまり、辛みはあくまで1つの要素であり、香りはもちろん、鮮やかな色あいまで含めて、料理の味わいを増す働きをしてくれるのがスパイスなのです。
日本は新鮮な素材が手に入りやすく、料理のあり方も、素材本来の持ち味を生かすことを重視してきました。そのため、個々のスパイスの風味を生かして、素材の味を引き立てる手法はあまり普及していません。しかし、スパイスのもつ多彩な香りや味を自在に操れば、料理の奥行きもグッと増すことでしょう。
なお、スパイスもハーブ同様、保存のしかたが不適当だと、その香りは台無しになってしまいます。保存のしかたは、基本的にハーブと同じ。直射日光や高温を避け、フタをしっかり閉めて冷暗所に置いてください。