翻訳|sprinkler
本来、液体や粉末などをまき散らしたり振りかけたりするものをいう。日本では以下の二つの意味で用いられることが多い。
(1)消火・防火用スプリンクラー設備 消火用スプリンクラー設備とは自動消火設備の一つで、建物の天井に配水管を配置し、これにスプリンクラーヘッドを一定間隔で取り付け、有効な給水源に連絡したものである。ヘッドが火災の熱によって一定温度(67~75℃)に達すると、放水口が開いて圧力水がヘッドの散水板に衝突し、広い範囲に散水する。放水とともに消火ポンプが自動的に作動し、同時に警報ベルが鳴る。主止弁を手動で止めなければ散水は続く。この設備の基準は建築基準法、消防法によって規定されている。防火用スプリンクラー設備はドレンチャー設備といわれ、隣接建物の火災による当該建物への延焼を防ぐための設備である。屋外に設けたスプリンクラーから出る噴霧水を壁、窓、屋根に一様に吹き付け、放射熱による加熱を水の蒸発によって抑え温度上昇を防ぐ。この設備は重要木造建造物のほか、耐火構造物の開口部などに設けられる。
[石原正雄]
(2)農業用散水装置 農業においては農作物または芝生などに散水する装置をいい、圃場(ほじょう)で灌漑(かんがい)に使用する場合は水源からのホースやパイプなどに取り付けた1個または複数のノズルによって水滴にして散水する。ノズルは水のもつエネルギーによって回転し、水を雨滴に近い水滴にして飛行させ、土壌や作物に落下させる。
スプリンクラーは可搬式と定置式とに大きく分けられる。可搬式はスプリンクラーを一つのセットとして任意の位置に移動して使用するもので、日本では小面積に対して利用されるのが一般的である。これに対して定置式は果樹園などの畑地に施設化され、小面積に対するものから数百ヘクタールに及ぶ大面積のものまで広く実用化が行われている。このような灌漑方法をスプリンクラー灌漑というが、このための施設は、水源およびポンプ、幹線と支線からなる配管、支線に設けられる立ち上がりとそれに固定される散水用ノズルなどから構成される。施設の規模が大きい場合はいくつかの区画に分けて順次散水する。この場合には切り替えのために弁開閉操作を必要とするが、これは電気的な制御が容易である。以上のスプリンクラー灌漑において重要視されるのは散水の均等性である。これを向上させることによって、単に水をまくのみでなく、水に肥料や農薬を混入させて散布できるようにしている果樹園もある。省力的でしかも散布者が農薬にさらされることがないが、周辺への影響や経済性から利用されることは少ない。
[平田孝三]
(1)消火設備の一つ。建築物の天井などに設けられ,火災時に自動的に水を噴出する装置。散水部,配管部,加圧装置部からなっている。散水の方式により,(a)散水する先端部(スプリンクラーヘッド,または単にヘッドともいう)まで加圧された水が常時満たされていて,火災時の加熱によりヘッドの栓の役目をしている合金,プラスチックなどが溶け,そこから散水する湿式閉鎖型,(b)配管内に水のかわりに加圧した空気を充てんし,火災時の加熱でヘッドの栓が溶け,配管内の空気が流出し,配管内の空気圧の低下により特殊構造の弁が開いて配管内に水が送水され,ヘッドより散水する乾式閉鎖型(寒冷地で配管内に水を入れておくと凍結するおそれのある場所に設けられる),(c)ヘッドの散水口が常時開口しており,配管内は通常からで,火災時に自動火災感知器の作動,または手動により加圧送水装置が起動して散水する開放型(天井が高い舞台部分などに設けられる)の3種がある。
→消火設備
執筆者:松田 守弘(2)果樹や芝生の散水灌漑に用いられる機械装置。ノズルから高圧で噴出される水の反動を利用して,ノズルの噴出方向を自動的に回転させながら散水するものである。スプリンクラーは散水器とこれに水を圧送するポンプ,送水用配管および原動機よりなる。散水器は左右2個のノズルをもったY形の噴射管本体と反動アームよりなる。片方のノズルから噴射された圧力水が反動アーム端の反動板に当たると,その圧動でノズルがわずかに回転する。次いで反動アームと噴射管の間にあるばねの復元力により反動アームはノズルのほうへ戻り,再び同様の動作を繰り返す。ノズルは1分間に1~2回のゆっくりした速さで回転し,円形状の範囲内に散水する。2個のノズルは直径3~10mmあり,それぞれ遠近の散布範囲を受けもつ。散水器にはノズル口径により1kgf/cm2以下で使う低圧用から7kgf/cm2までの高圧用があり,散水範囲直径も10mくらいの小規模のものから,60m程度の範囲をカバーするものまである。
執筆者:岡本 嗣男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…消火器および簡易消火用具はポンプのような動力源をもたないが,火災の際真っ先に取り扱うものなので,常時その能力を発揮するよう維持管理に努めることがとくに重要である。 自動消火設備にはスプリンクラー設備,水噴霧消火設備,泡消火設備,二酸化炭素消火設備,ハロゲン化物消火設備,粉末消火設備がある。スプリンクラーは一般建築物の普通火災(木材,紙,繊維などのふつうの可燃物の火災)の消火に適したもので,百貨店,商店街など不特定多数の人が集まる建築物の天井などに設けられ,火災時に自動的に水を噴出する。…
※「スプリンクラー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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